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水鳥の足
水鳥の足
「槇草、横払いは出来るようになったかの?」
二ヶ月後、平助が槇草に訊いた。
この頃には槇草も平助の稽古に異を唱えなくなっていた。
全てを平助に任せ、黙って居合の稽古に没頭している。
槇草は、鯉口を切ると同時に刀を一閃させた。
動きの角が取れて一拍子の抜き付けになっている。
「ふむ、まあ良かろう。ならば、今日はそれに浮身をかけてみよう」
「浮身ですか?」
「そうだ、膝を抜いて躰が浮いている間に抜刀するのじゃ。水鳥の足とも言うな」
水鳥の足とは、柳生宗矩の『兵法家伝書』にある足使いだ。
水鳥は水面に浮いている部分は優雅に見えるが、水面下は足の動きが忙しい。
つまり、躰が浮いている間に左右の足を素早く入れ替えることを言う。
平助は一度だけやって見せた。両足が同時に動く事で斬撃の間が半分になった。
「次はこれじゃ」平助は槇草に命じた。
大会まであと二ヶ月。




