0. イエーガー・ボムにはご注意を
新連載です、よろしくお願いします
ドゥンドゥンドゥン…
キャー!スゲー!!声や音楽がこの世界を作っている。私はスピードレールからお酒を取り出すと少しのパフォーマンスをした後シェイクして目の前のお客さんに提供した。
「お待たせいたしました、サイドカーです。」
私、山田ゆいの仕事はフレアバーテンダー。簡単に言うと瓶を投げたりシェイカーを回したりしてお酒を造る仕事である。今日の営業も無事終わり、家に帰って大好きなエナドリを飲もうと冷蔵庫を開けた。
「あとこの一本しかエナドリがない…?」
私は周りにも公認されるほどエナドリが好きなので意外に思われるかもしれないが、私はその時の気分によってエナドリのメーカーや味を変えるので、段ボールなどでの購入はせず、いちいちコンビニでまとめて買っている。…というのは建前であるだけ飲んでしまうのを防ぐためである。好きだけど健康的に飲んでいたいし、太りそうだし。私は他にもゲームと読書が大好きなのだが、一時期紅茶を飲みながら読書という何とも優雅なことをしてみたいと思って、やっていたのだがなぜか本を全部読み切ることにはティーカップからエナドリに代わっているのである。あのなんだが体に力を与えてくれるが同時に体に悪そうなあの味、なんとも矛盾していて、缶の中で炭酸がぱちぱちと鳴る。手にもつと缶がすごく冷たくなっていて冬なんかは思わず落としそうなるけど、それがまたいい。まあ、仕事で使ってるシェイカーに氷入れた時よりは全然なのだが。
さて、問題は今そこではなくてこの家にエナドリが一本しかないということである。朝起きたら一本は飲みたいし、明日は休日なのでどこにも出かけたくない。そうなると今からコンビニで買ってこなくちゃいけない、が背に腹は代えられないし行くかと腰を上げた。なんか重々しくいってるけど実際重いのだ。私にとってはエナドリは水を超えるライフライン、起動だけしたゲームを放置してコンビニに向かった。
夜風は気持ちいが早く帰ってゲームしたい、そう思って曲がり角まで走った。そしてそこで私は意識を失った。最後に見たのは驚いた顔で私を見るトラック運転手だった。
「…ぃす!目を覚ま…くれ!…ぁ、…の風邪なん…ろ…」
誰かが呼んでいる声がする、誰だろ、私確かトラックにひかれた気がするんだけど。目を少しずつ開けるとここは病室ではないことが分かった。え、いやまってなに。病室じゃないってどういうこと?死んだってこと?でもお墓とかでもないし、なんだか豪華なフリルのカーテンがついてるベッド。
「っ!やっと目を覚ましたか、アイス。俺がどれだけ心配したのかわかっているのか!ただの風邪なのに三日も寝込んで…全く、兄を心配させるのもやめてほしいな。」
え、兄?一人っ子なんですけども…まってあなたの顔どこかで、ん?こいつ私が好きな乙女ゲームに出てくる攻略キャラの一人、ルイド・スノー・クリアリルじゃない?その可能性高いでこれ。まって私のことをアイスって呼ばなかった?アイスって確か同じゲームに出てきたルイドの妹でゲーム内では悪役令嬢のアイス・スノー・クリアリル?つまりこれって、ありがちな転生?まじでいってんの?
「お兄様…あの私…」
「なんだ?なにが欲しい、持ってこさせようか。」
起きた瞬間ここはどこよりも一番最初に思っていたことを口に出す。
「エナドリ飲みたいです…」
「エ、ナドリなんだそれは」
「えええええええええええええええええええええええ!!!!!???」
拝啓、尊敬するジェリー・トーマスへ。このせかいにはえなじーどりんくがないみたいです。おわっています、このよのおわりです。しかもてんせいしたのがあくやくれいじょうでした。
あ、いいや。この際悪役令嬢のいい感じのエンドで終わって国外追放とかしてもらってこっちでもバーテンダーやってエナドリ開発してやるわ。順応性しかないじゃん私、ってか正直バーテンダーが天職だったしなー。やめたくないし、その時までがんばろー!
目指せ!異世界バーテンダー!そしてあっちの世界よりもおいしいエナドリを!!!!
初めましての方は初めまして、こうです。前回のものからはや一年たとうとしています。あんなに更新できていないのに私は筆を何となく折れずにいます。ゆるちて。今回、前から思っていたありがちな悪役令嬢に手を付けてみました、でもそのまんまだとつまんないのでプロットを書く時に自分に一つ縛りプレイをしたんですね。それが「机の上にあるものを三つ関連させる」ということでした。そのみっつというのが、このエナドリとシェイカーなどのお酒を造るための道具とフレア練習するための瓶、そしてさっきまでお茶が入ってた氷が中に入ってるグラスだったんです。だから主人公はエナドリが好きだし、現実世界での職業はバーテンダーだし、名前は寒そうなんです。
というわけで始まりました新シリーズ、更新をお待ちください~!!