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第9話 世界樹の少女



この時期にライブハウスなんかに人を呼んで集団感染する。


人呼んでクラスタ。








???



「うっ.........ん?」



涼しげな風が頬に当たるのを感じ俺は目が覚めた。

大樹からもれ出す光で少し眩しい。



「はっ、そうだ。あの子は.........。」



俺は、『魔毒病』に苦しんでいた少女の事を思い出す。

彼女の命は大丈夫なんだろうか.........。

もし、魔毒がまだ残っていたりしたら大変だ。


大きな石でも乗っているかのように重たい体に鞭打って俺は起き上がる。



『おお!目が覚めたのか!』



後ろから声が聞こえ振り返ると、フェンリルがいた。


コイツ、なんか変わったか?

あの殺伐とした感じはどこへやら、明らかに以前より雰囲気が柔らかい。



「あの子は大丈夫なのか?」



『ああ、あれだけ酷かった症状ももう完治して今は元気だそ。』



「何?もう完治したのか、早いな。」



安堵と共に少しの疑念を抱く。

俺は彼女の体内の魔毒は全て取り除いたつもりだが、だからといってそんな少し寝るくらいで症状は完治するのか?



『何を言うか、もうお前が倒れてから三日だぞ?』



なっ!まじかよ.........。だからこんなに腹も減ってるし喉もカラッカラなのか。

そりゃ三日も寝てりゃ身体も重くなるわ。



「まじか.........。というかさっきから妙に視線を感じるんだが、フェンリルじゃないとなると.........。」



そうなのだ。俺が起き上がったあたりからずっと視線を感じていた。

最初はフェンリルのものかと思ったがどうやら違うようなので、もしや.........。

そう思い、俺は視線が向けられているであろう方に振り向いた。



「ッ.........。」



天使がいた。

魔毒に蝕まれていた痣はもう消えており、綺麗な真っ白な肌に無愛想だがあどけない顔立ち艶のある白髪のロングヘアに宝石のような蒼色の目をした華奢な少女はもはや天使と言うほかなかった。


そんな天使は俺と目があうとすぐに世界樹ユグドラシルの裏に隠れてしまう。



『すまない、あの子はかなりの人見知りなんだ。』



フェンリルは申し訳なさそうに言ってきた。

コイツ本当に表情豊かになったな。



「ああ、無事ならよかったよ。」



少し仲良くなってみたい気持ちはあるが、彼女に無理はさせたくない。

それに今はあの子と仲良くなるよりも先にしたい事がある。



「なあ、何か食べ物はないか?そろそろ限界だ。」



そうなのだ。先程も言ったが、三日飲まず食わずで眠っていたのだ。

喋っているだけで喉もかなり痛い。



『ああ、そうだな。森から採ってきた果物が沢山ある。ちょっと待っててくれ。』







『俺は今から少し森に出る。数時間で帰ってくるからそれを食べながら待っていてくれ、我が帰ってきたら貴様を外に送る。』



今から森にいくのか。数時間で帰って来るのならちょうど良いな。

しかもこの果物かなり美味しそうだし。

俺はフェンリルが持ってきた色とりどりの果物が入ったバスケットを見る。


市場で見た事のない果物やかなり高級な物もある。

これは恐らくかなり危険度の高い森から採ってきたものだろう。



「ああ、助かる。」



俺が返答すると、フェンリルはユグドラシルの方に行ってしまった。



「取り敢えず座るか。」



俺は一面の花畑の中にあったちょうど腰を掛けられそうな岩を見つけて座った。



「何だこれ!?うまっ!」



俺は、見たことのなかった果物の中の一つを食べながらその美味しさに驚く。

この壮大な景色を眺めながら高級な果物も食べられるなんて幸せすぎだろ。

俺が枯れきった喉に染み渡る果実の甘味を噛みしめていると、



「あの.........私も一緒に食べていいですか?」



天使が話しかけてきた、羨ましそうに果物たちを見ながら。



「ああ、いいよ、ほら。」



俺はバスケットにあった果物の一つを天使に渡す。

すると、嬉しそうにしながら彼女はそれを受け取って俺の隣に腰掛けた。



「ありがとうございます!それと、その私の病気を治してくれてありがとうございました。」



「ああ、そのことか。俺もフェンリルとの取引だったんだ。そこまで恩を感じなくてもいいよ。」



実際、フェンリルがいなければ出来なかったし、取引だったのであまり恩を感じられすぎるとこちらも罰が悪い。



「いえ。倒れるまで私の治療をして下さったと聞きました。感謝してもしきれません。」



それでも彼女は引き下がらない。

人見知りと言っていたが、一回喋りだすと治るタイプか?



「取り敢えず食べようぜ。自己紹介してなかったな、俺の名前はガメオだ。よろしく。」



そう言えば、フェンリルにも俺の名前言ってなかったな。アイツずっと貴様呼びだったし。

まあかといって自己紹介をするような雰囲気ではなかったけどな。



「あ、私の名前はルーアといいます!ガメオさんっておっしゃるんですね!」



最初は、無愛想だと思っていたが話してみると意外と表情豊かだな。


ルーアは幸せそうに果物を食べている。



「すいません、私話したことない人だと怖くなっちゃって.........これすっごくおいしい!」



「はははっ。心の声が漏れてるぞ、その果物はたしか俺の村の近くにもあったような気がするな。」



ルーアが食べいる果物は村の近くの森にもあったような気がする。

森でみんなで遊んだ時に見つけてワイワイ騒ぎながら食べたような思い出がある。



「こんなにおいしい果物が取れるガメオさんの故郷ってどんな所なんですか?」



「ん、俺の村はな―――」







「それでそれで?その後ロゼさんはどうなったんですか?」



あの後、結局俺の故郷の話で盛り上がってしまって時間を忘れて話し込んでしまった。


ルーアも興味があるようで、さまざまな質問してきた為どんどん話が広がっていったのだ。



『打ち解けられたようで何よりだ。』



気づいたらフェンリルが帰ってくる時間になっていた。



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