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第6話 真価



やっとスキル強なります。



『そうか。では早速いくぞ。』



フェンリルは取引が決まるとゆっくりとこちらへ歩み寄ってきた。

その一つ一つの所作の美しさに思わず俺は息を呑む。



「その少女ってのは何処にいるんだ?」



いく、と言うのは少女の所へという意味だと汲み取り質問する。



『何を言うか。先に貴様のスキルを使えるようにしてからだ。まだ、貴様はそのスキルの真価を理解出来ていないようだからな。』



そう言ってフェンリル俺の前まで来ると俺に何か石のようなゴツゴツしたものを渡してきた。



『それは貴様がくる前に来た人間が持っていた鉄鉱石だ。まずはその鉄鉱石から鉄を取り出してみよ。』



「そんな事ができるのか?」



というかコイツ俺がここに来る前にやっぱり冒険者を殺していたのか。

向かってくる敵と戦い、殺すことはコイツにとっては当然かもしれないがつい先程まで自分もその可能性があったのだと思うと身震いしてしまう。



『通常の分解スキルでは到底無理な話だが貴様のそのスキルならば出来るはずだ。』



普通の分解スキルだった場合は対象物を完全に分解し、消滅させる事は出来るがこの様な対象物から目的の物を取り出すなんて事は出来ない。


半信半疑で俺はその鉄鉱石に向かってスキルを使う。

今回は鉄鉱石を分解するのでは無く、鉄の事をイメージする。




―――しかし何も起きなかった。



「ほらな?やっぱり何も起きないだろ?俺はちゃんと鉄をイメージしたぞ?」



俺は少し投げやりに言い放つ。



『違う。出来上がった鉄をイメージするのでは無くもっと鉄鉱石に集中しろ。』



フェンリルが冷静にアドバイスをしてくる。

俺はもう一度鉄鉱石に目を向け意識を集中させた。



『もっとだ。もっと意識を集中させろ。』



俺は、まだスキルは使わずにフェンリルの言う通りに意識を深く落とし込んでいく。








「なっ!まじかよ。」



深く集中しながら鉄鉱石を見ているうちに段々と鉄鉱石の中身が透けて見えるような感覚になっていく。

そして、自然とその要素が頭の中に入ってくる。


先程とは違い、俺は鉄鉱石の中の鉄の要素だけを括り出すような感覚をイメージする。





―――『因数分解』!!



次の瞬間、鉄鉱石を持つ手と逆の手に鉄球の様なものがのっていた。

見るからに洗練されており、今まで俺が手に取った鉄製の物の中で最も質量感があった。



「つ、使えた.........?ま、まじかよ。」



『ほう、やはり見込みどうりか。貴様に一つ教えておいてやる。通常の分解スキルならどんなに熟練していてもその鉄鉱石を分解するのに一分はかかる。部分分解とはいえ、この速度であれば使い用はいくらでもある。』



何だか俺はスキルが使えた喜びやら、自分を諦めなくて良かったという安堵やらでこみ上げるものがあり、少しウルっときた。



『スキルの習得も終わったことだ。

そろそ『ヴォォォ!!』丁度いいじゃないか。おい、人間この魔物を倒してみせてみろ。』



フェンリルが話始めると後ろから恐ろしい鳴き声が聞こえた。



「は!?そ、そいつキラーベアじゃねえか!」



感動もつかの間、キラーベアと言えばEランクの魔物でもトップの戦闘力を誇るこの森で一番強い魔物だ。

俺の実力では善戦は出来ても、勝つことは厳しい。



「うぉっ!?」



キラーベアが先制攻撃と言わんばかりに突進してくる。


俺はそれを辛うじて避ける。



『ヴォォォ!!』



キラーベアは俺が少し体勢が崩れたと見るやいなやここぞとばかりに爪攻撃を放ってくる。


俺は何とかそれを短剣ではじく。

このままじゃ防戦一方だ。



『何をしている?さっさとスキルを使え。』



フェンリルは小山のような所に移動しており高みの見物だ。


スキル?魔物相手にどう使うって言うんだよ?

俺は心の中で悪態をつきながらも、キラーベアに意識を集中させる。



『ヴォォォ!ヴォ!ヴォ!ヴォ!』



俺はキラーベアの連続攻撃をギリギリで避けながら意識を徐々に深く落とし込んでいった。



「ぐぁっ!!」



キラーベアの攻撃を短剣でもう一度はじこうと試みたが、あまりの攻撃の重さに俺は倒されてしまった。



『グヴォォォォォ!!!』



キラーベアはトドメと言わんばかりに爪を大きく振りかぶってくる。

だが、残念だったな。



「もう、透けてるよ!『因数分解』!!」



俺がスキルを使うとキラーベアの時が止まった。

中身が抜かれたように崩れ落ち一ミリも動かなくなった。



「何やねんこのスキル?強すぎやろ。」



俺は、左手に握りしめた大きなキラーベアの魔石を眺めながら呟いた。







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