第12話 Dランク
薄口です
「Dランク冒険者に昇格ですか?飛び級でってことですよね。」
数週間後、あの一件があった後もコツコツと依頼をこなして来た俺に思ってもみない幸運だ。
ギルドとしても俺がDランク冒険者に勝利したという事実は把握しているようだ。
「今回Eランクを飛び級とさせてもらったのにはキラーベア討伐の件が大きく関係しています。そもそもDランク昇格には条件があり、今回ガメオさんが全ての条件を満たしたというわけです。」
「その条件がキラーベア討伐であると。」
「はい。具体的にはキラーベアの討伐、魔物討伐依頼十回達成、依頼成功率80%以上です。」
なるほど、まあ納得できるな。
おそらくだが、今回報告した『コボルトの討伐』が十個目の討伐依頼達成だったのだろう。
EランクとFランクではまだ受けられる依頼に違いはなく、二つのランクの間に差という差はほとんどなかったように感じる。
「はい!これが新しいギルドカードです。これからも頑張ってくださいね!大型新人として密かに期待してますよ。」
新しくもらったギルドカードにはDランクという文字が刻まれており冒険者として一人前になれたと実感できた。
少しずつ、だが着実に依頼をこなすうちに俺に対する周りの評価は確実に変わって来ている気がする。
やはり、実力が認められ始めたのだろうか。
スラプと戦う前なんかはギルドに入るだけで白い目で見られたりなんかしてたんだが、最近はむしろ声をかけられたりもするようになった。
「おぉ!ガメオ、もうDランクになったのか!すごいな!どうだ?今から一杯いっとくか?」
ギルドから出ようとすると、酒場で飲んでいた酔っ払い冒険者から誘いが来た。
「すまない。今日は疲れたから早いとこ宿に戻るよ。」
俺はお酒が飲めない。この間誘われて飲んだ時なんかすぐに酒が回って寝ちまったからな。
味も、ただ苦いだけであまり美味しくなく感じた。俺にはまだ酒の良さは分からなかった。
だが、こうして誘ってきてくれるあたり腐っていると思っていたが意外に気のいい奴らだと最近わかった。
俺は誘いに乗らずに宿まで一直線で帰った。
何故かって?明日行きたい場所があるんだよ。
なんたってDランク冒険者になったんだからな。
★
翌日、俺は冒険者達で賑わう大きな洞窟の前まで来ていた。
F、Eランク冒険者とDランク冒険者との最大の違いはやはりこれであろう。
「『ダンジョン』だ。」
一人前と呼ばれる冒険者がこぞって訪れる場所であるダンジョンはかなり謎の多いものだ。
世界中様々な所に点在し、現在確認されているだけでも24個ある。
そのほとんどが既に踏破されており、確か残り三つでは無かっただろうか。
ダンジョン内には魔物が一定数スポーンし、魔物を倒した先にはトレジャー何てものもあったりする。
トレジャーはかなり珍しいものが多く、それを求めて冒険者たちはダンジョンに潜る。
ダンジョンで一攫千金を狙って冒険者になる人も多い。
まあ、一言で表すならば冒険者の醍醐味ってやつだ。
「お?兄ちゃん新人かい?教えてやるよ!あの洞窟の中にある魔法陣で中入るんだ。ここは初心者向けのダンジョンだからボスでもCランク級の魔物しか出ないが気をつけろよ。あと、露店で地図を買っとくのをオススメするぜ。」
頼んでもないのに、男が話しかけてきた。
俺の振る舞いから初心者である事を悟ったのだろうか。
「あ、ああ。ダンジョンは初めてなんだ。親切にありがとう。」
俺が礼を言うと男は直ぐに行ってしまった。
なかなかにお節介で親切な人だったな。
俺はそんなことを思いながらも言われた通りに洞窟の中に入った。
ちなみにアドバイスに倣って露店で地図も購入した。
薄暗い洞窟の中には地面が青く光る場所があった。
恐らくこれが言っていた魔法陣だろう。
「よし、いくか。」
俺は魔法陣の上に乗り、転移の準備をした。
ポーションも地図も携帯食糧も持った。これでダンジョンの中でもある程度は困らないだろう。
「ん?」
魔法陣が光だしたと思うと周りの景色がいきなり変わった。
「ここが、ダンジョンか。」
想像していた景色とあまりにも違ったため俺はかなり驚いていた。
入り組んだ洞窟のようなものだと勝手に思っていたのだがかなり違った。
階層によってかなり差はあるのだろうが、目の前には地上にいる時と変わらないような草原が広がっていた。
今見えるだけでも数人の冒険者が魔物との戦闘を繰り広げている。
朝クエストボードの周りにいつも沢山いて俺の依頼中にはほとんど会わない冒険者がどこに魔物を狩りに行っているのか納得がいった。
「とりあえず進むか。」
次の階層に行くためにはこの階層のどこかにある魔法陣を探さなければならない。
そしてそれはこの地図に書いてあると。
この広さのなか、先程のったサイズの魔法陣を見つけるのは至難の業だろう。
もし、さっきの人にアドバイスされずに地図を忘れてきたりしていたら.........
考えただけでゾッとする。
「シィィィ!!」
いきなり俺の前に魔物が立ち塞がった。
コイツはEランク級の魔物『暴れザル』だな。
この魔物は確か仲間を呼んで戦っていくうちにどんどん厄介になって行くことで有名だったはずだ。
「最速で倒しに行くか。」
仲間を呼ばれると俺のスキルの性質上かなり厄介になるためまだ一体の状態で倒すのが望ましい。
俺は暴れザルに向かって走り出す。
ここでは、接触なしでスキルを使用するよりも接触ありの最速でスキル発動が必要となる。
「キシィィィ!!」
暴れザルも、向かってくる俺に飛びかかってきた。
俺は走りながら持っていた短剣を暴れザルに向かって投げた。
「キシィィィ」
暴れザルはそれをかろうじて避けたものの体制が崩れたところで俺が上から押さえつけスキルを使う。
『因数分解』
暴れザルは押さえつけられた状態でもがいていたのだが、すぐに微動だにしなくなった。
「仲間を呼ばれてたら危なかったかもな.........。」
簡単に倒せたように見えるかもしれないが、そういうことでも無い。
一体一だから良かったものの、これが何十匹もまとまって襲ってきていたらたまったものではない。
やはり、俺のスキルは一体一ならばかなり強いが対多数となるとかなりきついな。
ダンジョン、想像以上に気を使わなければいけないな。
地図を取り出し、次の階層への魔法陣の場所を確認しながら俺は進んでいくのだった。
today's summarize
「ダンジョン行った。」