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第10話 別れ



1:10のカルピスくらい内容薄いです。



『随分仲良くなったな。ルーアが楽しそうで何よりだ。』



フェンリルが帰って来た時にはもう日が傾き始めていた。


そろそろ戻らないと、スナイマ草の依頼も失敗にされてしまう。

たしかあの依頼は三日後が納期だったはずだ。

依頼を受けて納期までに達成できなかった場合、違約金も発生してしまうし、何よりギルドからの評価にひびいてしまう。



「ああ、俺も楽しかったよ。ありがとう。」



俺はルーアに向かってお礼を言った。

ルーアは俺の話によく相槌をしたり笑ってくれたので話していてすごく楽しかった。



「え.........?ガメオさん帰っちゃうんですか?」



ルーアがしょんぼりとしながら言う。

そんな反応されたら帰りたくなくなってしまうじゃないか。



「ごめんな、冒険者としての依頼があるんだ。」



「そうでよね.........。わがまま言ってすいません。」



ルーアは目がうるうるさせながら謝ってきた。


ルーアが完全に天使な件。ルーアが完全に天使な件。

普通の女だったらあざとさを感じるような所を本心からやっているためたちが悪い。


撫でたい。すごく撫でたい。ものすごく撫でたい。


俺が強力な欲求をグッと我慢していると、



『よかったら、また来てくれないか?えーっと。』



「ガメオだ。ここに、また、来てもいいのか?」



そんなことを言われるとは思ってなかった。

俺はまたここに来る資格があるのか?

こようと思って行けるだけの力があるのか?



『ああ。ルーアもガメオとまた話したいようだからな。それにルーアの病気を治せるだけの力をユグドラシルの前で示したのだ。ここに入るだけの資格はあるだろう。』



「え!ま、また来てくれるんですか!?」



こんなに期待されているんだ。

来ないわけにはいかないよな。



「ああ、絶対に来るよ。土産でも持っていくから期待しといてくれ。」



そう言うとルーアは花が咲いたような笑顔になった。

くそ可愛いなおい。

というか自分で土産に期待しとけとか言ってハードル上げちまった。



『じゃあそろそろ行くぞ。』



フェンリルはユグドラシルの方へ歩き始め俺とルーアもそれについて行く。

俺は歩きながらこの内容の濃い数日間のことを振り返る。

冒険者としては異例すぎる滑り出しだな。

スナイマ草採集の依頼でフェンリルに遭遇してユグドラシルに行き少女の命を救うなんてな。

それも外れスキルだと思われていた奴がだ。


恐らく誰に言ってもにわかには信じて貰えないだろう。



『ガメオはこれからどうするんだ?』



フェンリルが尋ねてくる。

俺はスキルが使えなくても大きなリスクを払えばお金を稼げるかもしれないという理由で冒険者になった。

自分の可能性を最後まで信じて。


今はどうだろう、きっと今の俺は最後の可能性を掴んだと言えるだろう。

自らのスキルを覚醒させ、尚且つその力を確かめることが出来た。

今ならば、冒険者よりも安定した職にありつく事もできるだろう。

なんたって、世にも珍しい部分分解系のスキルだ。

雇ってくれるところは恐らくいくらでもある。


だが、冒険者よりもよっぽど安定した仕事があると言うのに俺は何故かまだ冒険者を続けたく思っていた。


何故だろう。男のロマンという奴だろうか。


俺はあの時、トールと出会った時に自分にもまだ最後の可能性があるという希望と命をかける覚悟、そして心のどこかでトールのように強く、人に希望を与えられるようになりたいと思っていた。

それに.........。



「ああ、そうだな。俺は冒険者としてのし上がろうと思うよ。少し前までの俺は、狭い世界で細々と安定した暮らしが出来ればいいと思っていた。

だが、こうしてフェンリルやトールに広い世界を見せてもらってからずっとワクワクが止まらないんだ。

男の性って奴だろうな。」



俺は吹っ切れたように言った。



『そうか、だがきっとその旅路は厳しいものになるだろう。ガメオ、貴様がもしもの時は助太刀してやるぞ。』



フェンリルは実に義理堅い魔物だと思う。

恐怖から始まったが結果的にかなりいい出会いになった。

そう言えばコイツトールという名前を聞いた時少し反応した気がしたが気のせいだろうか?



そんなことを思っていると、ユグドラシルの幹まできていた。



『ユグドラシルに手を当てながらイメージすれば、一度行ったことのある場所ならば基本的にどこへでも転移できる。』



まじかよ。伝説に残る世界樹の力は伊達じゃないってことか。

そもそも転移すらほとんど訊かないスキルだ。

入口が出口になってないこともこれまで見つからなかった理由の一つかもしれないな。



「うぅ、次はいつ来るんですか?」



ルーアは、やはり別れが悲しくなったのかまた涙目になってしまっている。


俺はその姿に思わず、ルーアの頭を撫でてしまった。

艶やかな白髪を少し乱暴に撫でながら俺は言う。



「近々またくるよ。次来るときはもっと面白い話をいっぱい持ってくるからな。」



ルーアは涙を流しながらも笑顔で答える。



「はい!短い時間でしたけど、私とってもとっても楽しかったです!」



クッ、こんなに言われたら俺も別れが悲しくなるじゃねぇか。

俺も涙目になっちゃうだろ。



『すまないな。ルーアは昔、捨て子だった頃に我が拾ってから人間と話したのは初めてなんだ。ガメオと話すのが余程楽しかったみたいだからまた相手をしに来てやってくれ。』



フェンリルからもまた念を押される。

そうか、ルーアが人見知りなのには過去が関係していたのか。

ルーアが人見知りを卒業するためにもいつかはロゼなんかも連れてきてルーアと仲良くなって欲しいな。



「ああ、もちろんだ。フェンリルもルーアもありがとう。またな。」



俺は精一杯の笑顔でそう言うとユグドラシルに手を当て転移した。




一瞬で景色が入れ替わる。

俺はフェンリルと出会ったあのスナイマ草の群生地転移した。



次は俺が一人前になってから顔を出そうと心に誓って涙目で依頼されている分のスナイマ草を集めてから俺帰りの道に行くのだった。




today's summarize


「王都に帰った。」

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