参
「なあなあ、もう一回見せてくれよ」
「おういいぜ。よっと!」
「……ほう、もう乗り越えたのか?」
ミネコの隣りにカガリが座る。
「まーネ。もう抵抗はないかナ」
「……相も変わらずお前はキャラ付けなんだな」
「それはあまり言ってほしくないかナ~」
猫のように伸びやかに喋るミネコに嘆息つくカガリは、どっと沸く歓声の方向に頬杖をつく。
マトは手品が得意だ。彼は幼少から注目され、テレビにも出た有名人だった。
しかし十年前、『神隠し事件』が大きく取り上げられ、それが沈静化した頃にはもう彼はテレビに出てはいなかった。そのため彼を知る人は居ない。
「ほら、きーえた! そしてお前のポケットにはコインが一枚」
「おお、本当にあるぞ! すっげー!」
「な、な! 俺にも見せてくれよ!!」
「わたしも!!」
彼はこの手品の種や仕掛けを公表したことはない。分かっているのは、
「『種も仕掛けも御座います』。 分かるかお前ら?」
『種も仕掛けも御座います』と、まるで『実は何もない』かのように思わせる決め台詞のみだった。
「ま、あれで友達できてるんだからいいんじゃなイ? 基本ネーサンみたいに深く踏み込まなければ、あるいは『神隠し事件』に触れなければ周りには優しいんだかラ」
「ま、それが仮面でもいいならだけど、ね」
そういうとカガリは席を立ち、廊下へと姿を消した。
後に残っていたのは、『今日の深夜、メンバーで【門眞町 神霊館】に集合。遅れれば無理矢理たたき起こしに行くので悪しからず』とセロテープで貼られた紙だった。




