壱
卒業を控えた2月半ば、〔萩時 魔刀〕は職員室から出ると足早に学校を出た。
今日はとある高校の入試結果がわかる日だが、それ以前にその高校の理事長を名乗るヤツからの連絡を受け、結果を見ずに『葉坂高校』の職員室まで行く。
「やあ、待っていたよ。」
ドアノブに手をかける直前、誰もいない廊下に一人の少女が立っていた。初見なら迷子と勘違いするだろうが、オレはその知人を知っているため、彼女がこの学校の理事長なことを理解した。
「……で、オレに何の用だ?」
「なるほど、確かにお姉ちゃんの言う通りだね。すごく性格に難ありか」
「……来るもの拒まず、がモットーの学校と聞いたんだが?」
「そう、むしろ君みたいな特殊な人には是非入学して欲しい。でも、君は不合格さ」
「……理由を話せ。オレはその姉に通してもらった筈だが?」
納得出来ない。既に矛盾した回答だということを理解しているのかこのガキは。
「理由ならあるさ」
歩み寄る少女の口元は、悪巧みしたガキ大将のように笑っていた。
「君は『怪奇』を調べている、で間違いないね?」
「……どこまで知ってる」
「実際には何も。でもそんな君にだからこそ斡旋したい学校があってね」
そう言うと、どこからともなく一つのパンフレットを手渡された。
「『私立木咲高校』に行くといい。ここにはその専門家がいる。君が欲しがってる情報の手助けができる筈だ」
悪くない話ではある。が、どうしてもそれではダメだ。
「悪いがここだ。オレはその一番の手がかりを持つ男に会いに来た」
「『聖夜の魔法使い』でしょ?」
今更驚くことはない。この女は見た目以上に、知人の情報屋より裏に精通しているように見える。オレの情報の一つや二つ、持っていて驚きはしない。
「……知ってるならなおさらだ。オレはその男に––––」
「無理だね」
即答だった。
「無理さ。君じゃ彼の底を知れはしない。君じゃ手のひらで踊らされるだけさ」
「なぜそんなことが」
「現に今の私でさえ踊らされるだけだからさ。今の君では煙に巻かれるだけ」
納得できない。それを理解してか一つ提案をしてきた。
「じゃ、君がもし何かしらの成果をこの高校であげられたら、彼との面会の場を設けてあげるよ」
「……」
これが最大の譲歩だ、と理解したオレは何も言わず、パンフレットをひったくって、笑顔で見送る少女を後にした。




