怪奇追いしもの
十年前の話だ。当時五歳のオレは誰よりも優秀なガキで、どんな高校問題さえも解ける、いわゆる『天才』だった。
当時は多少謙遜してはいたが、周りの同年代のヤツらを下に見て嘲笑い、勉強とかこつけあまり接しなかった。
よく年、オレは一年生になった。だがあまりにつまらないことである。周りはひらがなを覚えている中でオレは図書室でなんたら力学とか調べていた。そもそもそんなのが小学校にあっただけで奇跡だが、おそらく教師が用意してくれたんだろう。
だが流石に一人も退屈ではあった。だから休み時間は周りのやつとサッカーをした。もちろん頭脳を使わずに小学生クラスに下げるのは少し骨が折れたが。
四年になった時、二年の問題も解けないバカがオレの前に運ばれてきた。教師曰く「覚えが悪くお手上げだ。天才の力を借りたい」とのこと。快く受け入れ、オレはそのバカに教えた。
初めはお手上げだった。本当にここまで理解しないバカがいるのかと。だがコツを掴むのが少し遅かっただけで、そのあとは吸収が早かった。みるみる成績は伸び、それを聞きつけたバカ達がオレに教えをこいに来た。正直オレの勉強は若干滞るが、あの時は本当は嬉しかった。同胞を増やせると思ったから。
さらに三年が過ぎた。バカはいつのまにかオレの足元まで近づいていた。本当に楽しくて仕方なかったからこいつから離れられなくなった。本当にオレが一番バカなのだと今ならわかる。飛び級の話まだ蹴ったのだから。
そしてさらに一年後、オレは普通の家族を『とある怪奇事件』で失い、その時深手を負ったオレは学力を失くした。記憶能力等の低下が若干あり、小学生一年生の問題すらやっとだ。いつのまにかそのバカとは真逆になっていた。
しかし努力すれば戻ったかもしれない。いや戻せると断言まではしなかったが医者は言っていた。分かっている、分かってはいる……。
しかしオレは、中学までの学力を取り戻しただけでやめた。オレには、あの日を境に『とある目標』が出来たから……