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第1話 たい焼き屋の店主
最初に断っておこう。ぼくはポジティブだ。ただ、アツいのは大嫌いだ。
短かった人生がいま終わろうとしているが、本当に悔いはない。
この数日間にわたる生き様を後世に残しておこうと、自伝的小説を書くことにする。
ぼくには同じ鉄板の上で焼かれた同志がいる。いくら楽天的な性格だとはいえ、炎天下の中、体感温度が200度を超える過酷な状況。嫌になってしまう。
ー とある日の朝、生みの親であるおじさんとケンカした。
「ししゃもは頭から食べると頭が良くなり、尾から食べると足が速くなる、と言うがそれは、たい焼きでも効果はあるのか」との客の質問におじさんが腹を立てたことが事の発端だった。
おじさんは根っからの魚好きで、幼い頃から漁師になるのを夢見ていた。というのも、彼の家は代々、カツオ一本釣り漁を生業としており、この界隈では有名な一家だ。
そのおじさんが何故、たい焼き屋を営むに至ったのかー。
話は今から35年前、
日本が当時の中華民国との壮絶な戦争を繰り広げていた1940年までに遡る。
おじさんは、東シナの海上で難破していた。