表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

39/97

吸血鬼化4

 アロの身体を持ち上げて、軽く彼女の頭に手を当てる。


「まぁ歩けるようで良かった。 目を覚ましていなかったから不安に思っていたが」

「……そんなに酷い怪我はしてませんよ?」

「頭打ってたら死ぬ可能性もあるだろ。 ……何にせよ二人とも生き残れたのは奇跡だな」

「これからどうします?」

「とりあえずしばらくはこの村に滞在するのは必須だな。 流石に戦える奴はいるだろうが、放置していくわけにもいかないだろう。

 話せることは話して説得して滞在を許してもらおう」


 そんな話をしていると先程の女性が大きな家から出てきたのが見え、軽く手を挙げていることを示す。


「あっ、もう一人も起きたんだ、よかった。 さっきはごめんね、ちょっと急いでて」

「いや……悪い、ありがとう。 自己紹介もまだだったな」

「そだね、家の中で話そうか。 夜は冷えるからね」


 女性に連れられて家の中に入り、女性が台所で作業をしている横に立つ。 机のところの椅子に座っているように促される。


「ほら、怪我治ってないんだから座っておきなよ。 えっと、お粥食べれる?」

「悪い、ありがたくいただく」

「あ、すみません。 ありがとうございます」


 アロの前の前に粥が置かれて、水の入ったコップが三つ置かれる。

 ありがたく飲ませてもらい、女性を見る。 年は俺よりも少し上で、周りを見れば一人暮らしではないのが分かる。 夜だがいないのは、偶々何かの用事でいないのか、出稼ぎか何かだろうか。


 そう言えば、不思議とこの女性の血を飲みたいと思わないな。 何かしらの条件でもあるのだろうか。


「……俺とこの子、アロは異界の調査に来ていた」

「あー、そういえばこの前にきた騎士さんたちも似たようなこと言ってたね」

「まぁ公的な調査員というわけではなく、個人的な行動だけどな。 俺はベルク=フランだ」

「えっと、同じく調査をしていたアロクル=オートダイ……ああっ、オートダイではなく、フランです。 アロクル=フラン」


 わざとらしい言い間違え……。 わざと間違えて本当の兄妹ではなく最近苗字が変わったというアピールをしている。

 顔に似合わず姑息である。


 俺とアロを見て少し引いたような表情をしている女性は俺たちが自己紹介をする前よりも距離を置いた様子でゆっくりと口を開いた。


「私はルシール=シャムだよ。 ここの村人で、今日の朝に君たち拾ったの」

「ありがとう。 おかげで助かった」

「ありがとうございます」

「いや、いいって、それで魔物に負けてこっちにきたって感じなの?」


 まぁその言い方で間違いはないか。 頷くと、大変だったねー、と女性は言って、でも危ないことはしないの、と窘められる。


「申し訳ないが、しばらくこの村に滞在させてもらえないか。 アロの身体を直したいのと、異界から魔物が出てきているようで、その対応をしたい」

「村の護衛ってこと?」

「有り体に言えばそうだな。 調査目的なのも大きいが。 まぁ、夜目が効くから夜の見張りをしたい」

「うーん、どうだろ。 私は疑ってないけど、盗賊が忍び込んで仲間を引き寄せようとしているって思う人もいるかもしれないからね。 あまり放置は出来ないかなぁ」


 それもそうか。 俺の村の近くは居座っていても俺が森の中で対処出来ていたが、そういう役割のいない村なら警戒して当然だ。


「とは言っても放置して魔物に襲われるのを見るのも忍びないな」

「まぁ明日、許可を得てからになるね。 魔物が来るかもしれないことはすぐに伝えてくるよ」

「頼む。 あと、俺が持っていた剣はどこにある?」

「それは危ないかもしれないから預けてるよー。 まぁ話が終わったら戻って来ると思うよ」


 まぁ俺のものではなくレイの遺品なのでどうでもいいと言えばどうでもいいか。

 良さそうな剣ではあるのであればありがたいが。


 ルシールが魔物のことを人に伝えに行き、また家に二人で残される。


「ベルクさん、あれ、僕の分じゃなくてベルクさんに用意されていたものなんですね」

「別にそうは言われていない。 食べておいてと言われただけで名前は指定されていない」

「知りませんからね。 ……とりあえずどうぞ」

「お前が食え、とりあえず口移しでいくらか入れておいたが、まだ栄養が足りないだろ」


 口移しという言葉を聞いて、アロは顔を赤らめて俺を見る。


「お腹いっぱいだから、いいです。 遠慮しているわけではなく」

「少しでも入れておいたほうがいい、ほら」

「……本当にお腹いっぱいですから。 別に「あーん」ってされるのが恥ずかしいわけではないですよ。 どうせ、しばらくはそうしてもらうことになりますから」


 そこまで言うなら俺が食えばいいか。 すぐに喉の奥に掻き込み一瞬で食べ終わる。

 アロは背中が痛いのか、椅子の背もたれにもたれることはなく、背を曲げないように動いている。


「……悪い。 守ってやれなかった」

「いえ……僕が無謀な突進して払われただけですから。 あれは本当に悪手でした」

「……いや、俺が悪かった。 やめてくれた方が助かったが」


 折れていない方の手を動かして俺の頭を撫でる。


「あと、話は変わるんですけど……。 ベルクさん、ここから帰ることって出来るんですか?」

「……どうだろうな。 日に弱いだけなら厚着して肌を隠せばいけると思うが……」

「レイさんに聞いてみますか? はぐれてしまってますけど」


 ああ、そういえばアロはレイが死んだのは知らないのか。 そのことを言おうかと思ったが、これ以上アロを悲しませるのも嫌だ。

 また異界に戻ってもその前に遺体は魔物に食われているだろうから死んだことは言わなければ分からないか。


「そうだな。 また会ったら聞けばいいか。 もう一人の方には聞けそうもないけどな」

「……あの人が魔力放出する術式を守ってるんですよね」

「そうだな。 ……放っておくわけにはいかないが、勝ち目も薄い」


 ニムに任せるわけにもいかない。 何せ……ニムよりも強いかもしれないからだ。 それに俺が生き残れたのは、英雄級ではないのに多少強かったのが面白いという理由で、強ければ見逃されるというわけではないだろう。


「全ての符術が通用しないわけじゃなかったので、また新しいのを作れば……」

「いや、技術が頭打ちだ。今持ってる技術だとこれ以上役に立つ物は作れないだろう」

「……でも、どうするんですか」

「太陽光が効いていなかったことの秘密……あれ、おそらく魔力量が多いからダメージにならなかったんだと思う。

 明らかにレイの方が俺よりも太陽に強そうだったしな」

「……丈夫だから大丈夫ってことですか?」

「おそらくな。 特殊な技術があればどうにかなる程度の物なら吸血鬼同士で敵対することはないだろう。 三例しかないとは言えど理屈には沿っているから多分間違いがないとは思う。

 そこで……単に効かないのではなく、強度や回復力が優っているだけだとすれば、例えばレンズで陽の光を集めれば倒せるかもしれない」

「……確実ではないですよね」


 トントンと自分の目の下を叩き、軽く笑う。


「相手が検証出来る材料を寄越したんだ。 確実なレベルに持ち込める」


 アロは少し嫌そうな表情をした。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ