10/13 『空想』
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斂侍電志:青みがかった黒の長髪に眼鏡の少年。鋭い目つきでよく怖がられる。超論理思考。
倉朋愛佳:背中まで伸びた茶の髪に垂れ眉と切れ長の目を持つ少女。一人称はボク。感情の赴くままに生きる。
〈DDCF〉:宇宙戦闘機設計部でその名の通り設計士が集まる部署。室内は広大で、棚と机が雑多に並ぶ研究所風の空間。壁や天井は木目調で、床は靴音を吸収するカーペットが敷き詰められている。部屋の一角、宇宙がよく見える大窓の傍に電志と愛佳の机がある。
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〈DDCF〉は今日も平常運転。
愛佳が作業の手を止めて話し出した。
「さあ電志、そろそろボクたちのトークショーの時間だ」
それを受け電志も作業を中断し、応じる。
「ああもうそんな時間か」
「今日のブックマークは、微増だったよ」
「ほう、ちょっとだけ増えたか」
「うん。ほぼ変わらずだけど、新しい人ウェルカムだね」
「ああ、気に入ってくれると良いんだが」
「電志、空想とは何だろう」
「ファンタジーとかじゃないか?」
「ファンタジーは幻想だよ」
「む、そうか。空想ね……想像上の出来事か」
「ボクはね、こう思うんだよ。電志にボクがディベイトで負けることこそ空想なんじゃないかって」
「それは空想ではなく紛れもない事実だな」
「ボクはいつもおかしいと思っていたんだ。ボクが電志に負けるハズがない」
「なら勝ってみせてくれよ」
「電志は、ズルをしている……!」
「なあ俺の話、聞いてる?」
「トークショーが終わったらまた勝負だ。今度はズルを見逃さないからね」
「ディベートをもう1回やりたいだけだったのか。それならそうと言えば良いのに」
「ボクはあくまで電志の不正を暴きたいだけだよ。今日はこの辺で締めようか」
「そうだな、また明日だ」




