10/9 『見える化しなくて良いもの』
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斂侍電志:青みがかった黒の長髪に眼鏡の少年。鋭い目つきでよく怖がられる。超論理思考。
倉朋愛佳:背中まで伸びた茶の髪に垂れ眉と切れ長の目を持つ少女。一人称はボク。感情の赴くままに生きる。
〈DDCF〉:宇宙戦闘機設計部でその名の通り設計士が集まる部署。室内は広大で、棚と机が雑多に並ぶ研究所風の空間。壁や天井は木目調で、床は靴音を吸収するカーペットが敷き詰められている。部屋の一角、宇宙がよく見える大窓の傍に電志と愛佳の机がある。
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〈DDCF〉は今日も平常運転。
愛佳が作業の手を止めて話し出した。
「さあ電志、そろそろボクたちのトークショーの時間だ」
それを受け電志も作業を中断し、応じる。
「ああもうそんな時間か」
「今日のブックマーク等は、微増だったよ。ボク達のトークショーもね」
「俺と倉朋の会話は傍から見てると面白いのかね」
「傍から見なくても面白いよ」
「俺は割と噛み合った会話をしてくれた方が面白いと感じるんだが」
「ボクは面白いから良いんだよ」
「片方だけが面白いって不思議だな」
「電志、匂いを見える化できないかな?」
「パッと思いつかないんだが」
「でも匂いって匂いの元が漂ってるんでしょ。それに着色すればいけるんじゃあないかい?」
「ふーむ……ずいぶん世界がカラフルになりそうだな」
「そうでしょ。そうしたら楽しいと思うんだ。それに良い匂いが分かればそっちに行っていっぱいに吸い込める」
「逆にミドル臭とかだと汚い色とかな」
「そういうのはしなくて良いよ。見える化しなくて良い」
「まあ、見たいものだけ見えれば良いか」
「人は見たいものしか見ない生き物だということだよ」
「別にそれはミドル臭のためにある言葉じゃないんだけどな」
「格言とはドヤ顔で言えればそれで良いんだよ。今日はこの辺で締めようか」
「そうだな、また明日だ」




