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フィギュアハンター  作者: 桜崎あかり
2/16

序章2

・2021年9月4日付

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 西暦2018年6月1日、電機店の模型コーナーで物色をしていた男性、彼は声のする方が気になり始めていた。

「フィギュアハンターの何が悪い? 俺たちは、あのアイドルグループが行っている悪徳商法を駆逐した英雄だぞ!」

 世紀末ヘアーな別の男性が男性店員に殴りかかろうとしていた。このままでは警察沙汰になると思われた、その瞬間――。



 世紀末ヘアーな人物の拳を受け止めたのは、女性客だった。どうやら、今の騒ぎに気付いたようだ。そして、彼女は右手で受け止める。その右手は白い手袋と思わしき物が確認出来るが――それ以外の外見は周囲もドン引きするような物である。

「フィギュアハンターなら、店内で騒動を起こすような真似は禁止されているのは――知らない訳はないよね?」

 禁止されている、と言った後に世紀末ヘアーの人物が放った拳を受け止めた右手で握り潰そうとしているのは――悪意があっての物ではないが、無意識に怒りが込められている可能性は高い。

「そこまで言うならば、外で決着を付けようじゃないか!」

 拳を受け止められた方は悲鳴ばかりで話にならない為、もう一人の人物が代わりに彼女に対して決着を要求する。彼女の方は特に拒否するような事もなく、そのまま店外へと向かう。しかし、世紀末ヘアーの人物は、さりげなくスマートフォンを操作して増援を要請しているように見える。



 外に出た2人組とは別に同じような世紀末ヘアーの人物は他にもいた。それに気付かなかった彼は――。

「まさか――?」

 彼は思わず声を上げようとしたが、警察沙汰になるのは店にも迷惑がかかる。それに、出入り禁止になって不利になるのはフィギュアハンターも同様だ。

 フィギュアハンターには『店に迷惑をかけない』という大前提ルールが存在する。これによって、過去のフィギュアハンターは成り立っていたと言っても過言ではない。当時のフィギュアハンターは、文字通りの能力者バトルと言っても過言ではない。その様子はフィギュアを争奪すると言う事で市民にはシュールに見えたようだが。

 次に彼が取った行動は目を合わせない事だった。しかし、零距離まで接近された訳ではないので、上手くすれば相手をスルーする事は可能である。しかし、別の客が対象外と思われるメダル玩具を購入しようと手を伸ばした事で、世紀末ヘアーの人物と目が合い、更に――。

「無関係者が――!」

 世紀末ヘアーの男性は、別の客に殴りかかろうとしていた。そして、彼は思わず声をあげてしまった。他の客に危害を加えない為に――と見てとれるかもしれない。

「それ以上、他の客に危害を加えるなら――」 

 彼は少し震えながらも世紀末ヘアーの人物に立ち向かおうとしていた。しかし、フィギュアハンターは基本的に異能力を持っている。その為、下手に喧嘩を売れば返り討ちになるのは、いわゆる一つの死亡フラグ――ウィキにも明記されていた。

「そう言えば、お前もガジェットを持っていたな」

 世紀末ヘアーの人物は客から離れ、彼の方へと接近する。その間に客の方は忍び足でフィールドから離脱する。

「同じハンターならば、お前にも通り名や二つ名はあるだろう?」 

 彼は世紀末ヘアーの人物の言う事に驚きを感じている。確かに、自分はARガジェットを持っているが――それは別のゲームで使用する物であり、フィギュアハンターとは無関係のはず。異能力を使うハンターにとって、ARガジェットはどのような価値があるのか?

 その一方で、彼の方は自分の名前を迂闊に名乗れば命に関わると考えた。そして、周囲を見回し――。

 彼の視界に映ったのは、戦艦模型の箱の数々である。そこには戦艦の名前が書かれているのだが、あまりにも有名所を名乗れば向こうを挑発しかねないとも考えていた。【金剛】、【榛名】、【霧島】、【比叡】、【加賀】、【赤城】、【三笠】、【プリンツ・オイゲン】、【ヴァンガード】、【アイオワ】等の箱が積み重ねられている棚が目に入る。

 この中から使えそうな名前は――そう考えた彼の眼に映った物、それはある国の空母と思われる模型の箱だった。

「僕の名は――グラーフ。グラーフ・ツェッペリン」

 彼はグラーフと名乗り、ARガジェットを取り出すふりをしてその場を逃げようと考えた。しかし、そう簡単に問屋は下ろさない。名乗ってしまったが最後、これが決闘の宣言と世紀末ヘアーの人物に勘違いされる事になる。



 そのグラーフを見かねていたのは、迷彩カラーのコートを着た長身の人物だった。コートのデザイン的な関係もあり、性別を識別できるような情報は確認できない。身長は170位と分かるのだが、それ以外はサングラス等で素顔を隠している為に遠目でも正体を見破れないだろう。店内ではフルフェイスは禁止の為、そこまでは隠せないという事情もあり得る。

「これを――」

 世紀末ヘアーの人物に気付かれる事無く、この人物はグラーフの目の前まで接近していた。まるで、来ているコートがステルス迷彩を思わせるほどだ。さすがに、ステルス迷彩を店内で使えば万引きに悪用されるのは目に見えているだろうが――そんな事にこの人物が使う様なオーバーテクノロジーを使えば、最低でも首は吹っ飛ぶだろう。

「これは――ハンターガジェット?」

 グラーフはこの人物が手渡した物がハンターガジェットである事が、すぐに分かった。それもそのはず、目の前の世紀末ヘアーの人物もハンターガジェットを所有していたからである。

「そこのモヒカン! そんなに血気盛んな表情でバトルに飢えているのなら――店外で決めたらどうだ?」

 まさかの展開である。声質からすれば、明らかに女性だ。しかし、そう断言出来る体型を確認できない以上、ボイスチェンジャーと言う可能性も捨てきれない。

「貴様もハンターならば、一緒に片づけて――?」

 モヒカンと言われて逆上していた世紀末ヘアーの人物だったが、目の前にはグラーフしかいない。つまり、彼の眼には迷彩コートの人物は見えていないのだ。周囲を見回しても、店内放送で私的な決闘申し込みが出来るはずもないので、目の前のグラーフが決闘申し込みをしていると判断した。

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