エピローグ
>誤植修正
・午前2時8分付
ファンに夜→ファンによる
感染される位→感染させる位
・2021年9月5日付
細部調整
6月下旬、島風あいかはゲームセンターで音楽ゲームを楽しんでいた。どうやら、フィギュアハンターは休止と言う事らしい。今でもコスプレイヤーとしての地位は変わらない為、あちこちに呼ばれて活躍しているようだ。何故、彼女がフィギュアハンターを窮したのかは本人が多く語らない為、詳細不明とネット上で言われている。
雪風真姫、彼女はフィギュアハンターを続けているようだが、今では違法転売屋等の駆逐を目的としたセミナーも行っているらしい。正しいコンテンツとの向き合い方、雪風は今回の事件で色々と学んだのだろう。フィギュアハンターの人気は一昔よりは落ち着いている事に加え、モラルの悪いプレイヤーが激減したのも雪風のセミナーなどの効果だろうか?
グラーフ・ツェッペリン、彼はフィギュアハンターとしての活動は続けている。その一方で、悪質な転売屋を通報する役割も持っていた。
「やっぱり、一連の事件が終わったとしても――歴史は繰り返すのか」
超有名アイドルの総選挙、その選挙券が同封されたCDが600万枚のヒットをしているように見せかけ――というネットのニュースを発見したが、そのニュースはガセだったのである。そのガセニュースを見て、一安心をしたような表情になっていた。本来、このニュースが現実になっていたら炎上どころの騒ぎではない。
「本当の意味でコンテンツを消費する事の意味――」
グラーフは、一連の事件で超有名アイドルを完全駆逐すれば問題は解決すると思っていたが、実際はそうではなかったのである。特定のコンテンツを排除しても、結局は共存共栄をしていなければ――ネット炎上勢や悪目立ち勢力が悲劇を繰り返すだけ。思うことはたくさんあれど、それを押し付けるのではなく、コンテンツに関わる人間が情報を共有し、環境を整えていく事こそが重要であると。
6月25日、ある人物はスマートフォンを持って別の人物と連絡を取っていた。その人物はボイスチェンジャーの影響で、誰なのかは分からない。しかし、それは些細な事だと思っている。使われているボイスチェンジャーは無名ではなく全く別のメーカーである為、人物が特定がされにくいのは間違いないだろう。
『ネット上では、ある漫画作品の実写映画化の話で持ちきりだ。おそらく、週刊誌等の売上アップ狙いのガセ情報だろうが――主演が超有名アイドルの段階で、芸能事務所主導と思わせる部分が――』
声の口調は男性だが、ボイスチェンジャーを使っているので正しい性別は分からない。
『石田光成と言う人物――どうやら、アバターだったらしい』
『おそらく、過去のフィギュアハンターでのプレイヤーを想定した練習用プログラム。それが暴走した結果――あの事件が起きた』
『彼が起動したプログラム消滅のトラップも、実はブラフだったらしい事が解析班の解析結果で判明している。何とも迷惑な話だ』
『あの兵器に搭載されていた武器、物理的損害は出ないとしても――施設のプログラムをウイルスに感染させる位の事は可能だったらしい』
『しかし、ターゲットを踏まえるとどちらに転んでも、我々にはダメージが大きくない』
『あの連中は芸能事務所が都知事選挙に貢献し、更には日本と言う国を立て直した英雄――そうした肩書きが芸能事務所には必要だったのだろう。投資家を増やす為の実績を得るために取った行動、それがいわゆるフラグとなったのかもしれないが――そんな事は些細な事』
『その都知事は不祥事で辞任し、その影響で国際スポーツ大会も辞退する事になった。数日後のスポーツ紙の一面を飾るのは間違いないだろうな』
スマートフォンを持った人物は特に話すようなことはないと考え、この人物の話に耳を傾ける。電話に出ている場所は草加市内のコンビニらしいが、その様子を目撃しようと言うつぶやきサイトの住民等はいない。
『2020年、東京で行われるのは国際スポーツ大会ではなく――コンテンツ流通を考えるサミット、あるいは博覧会的な物になるとも言われている』
『しかし、それを妨害しようとする超有名アイドルファンはいるだろう。スポーツでも凶悪化したファンによる迷惑行為が問題視されているが――』
『とにかく、君の行動をこちらで制約しようとは思っていない。存分に頑張って欲しい』
他にも言及しようと電話の主は考えたが、これ以上の拘束も不要と考え、電話を切る事にする。
『グラーフ・ツェッペリン――あるいは――』
何かを言おうとしていたようにも思えたが、グラーフは途中で電話を切った。その視線の先には超有名アイドルの新作のポスターが飾られたCDショップが見える。グラーフが、何を思ってCDショップを見つめていたのかは分からない。