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ステーキレストランを作ろう④

 

  激動の初日から約1週間


 騎士団副団長のジョーが気を利かせしばらくの間、キシリタール騎士団から非番の騎士を何人か派遣してくれた事、カンナ、ミラ、セッリがかなり優秀だった事もあり、大きなトラブルも無く乗りきった。そして追加で新たに4人の元調理人と6人の接客担当、計10人の従業員を雇い、騎士団から人手を借りなくても、問題なく店を回せる状態になった。


 目下のところ、数は揃った従業員の質をあげるために、指導中である。


 しげるはもちろん調理を主に指導しているのだが、新しく入った4名の調理人は豊富にある食材・香辛料・調味料をフルに使える環境、給金も普通の調理人よりかなり高く貰えるとあって意欲が高く、元料理人ともあり腕前も良く、現在はしげるに代わる調理部門の責任者を選定中である。


 接客(ホール)に関してはセッリが責任者として指導にあたっている。

 彼女は初日にも見せた細やかな気配りができる為、しげるが指導者として適任と判断した事による抜擢だ。セッリは客・従業員からの評判もよく、実際にあり得るシチュエーションを想定した、いい指導方法を自ら考え、上手く教育している。いずれ、店の店長になる日もそう遠くないだろう。


 そして希望者には店舗運営や経営の勉強を賢者が教えている。

 しげるたちは今後従業員をさらに雇い、接客・調理の質が安定すれば2号店、3号店と店舗を増やす計画である。そのためには優秀な管理者が必要不可欠。2号店に関してはかなり早い段階に、開く算段の賢者の指導は熱が入る。



 経営指導者・店舗出店計画者の賢者は思う


  『物事はスピードある行動が大事』


 どんな素晴らしい計画や案も行動し、実現しなければただの絵空事、妄想。大局も勿論大事だが、小局も疎かにしてはいけない。

 それに、たとえ小さな事も実際に行動に移し、完成すればそこに恩恵があり、小さい事を積み重ねれば大きなチカラとなり、世を動かすと。


 立地のいい店舗、今後更に必要な物・食材を入手する為の商人との契約、各種手続き、根回しなど、これらは賢者の主導で既にまとまっている。

 ただ、どんなにいい店舗(はこ)、いい食材があっても結局は、一番大事な根幹は料理人の技量・腕、スタッフの心。そういった能力を持つ者を育成できれば、複数店を出しても大丈夫であろう。






 1号店オープンから約3週間後、王都南門近く。なかなか大きい立派な2階建ての元宿屋兼定食屋、その空き店舗にステーキレストランしげる2号店が開かれた。

 1階が、レストランしげるの店舗スペース、1号店とほぼ同じ50人ほどが入れる。

 2階が宿屋部分で、当分は従業員の宿泊施設として使用する、要望があれば部屋の貸し出しも検討中である。


 2号店をここに開いたのは立地上の関係


 キシリタール王都は王城を中心にして王都が発展している。

 王城の近くに国営飲食店。

 王都北門近くに1号店がある。

 必然的に、南門近くの住民は飲食店を利用するなら多少距離を移動しなければならず、不便な為優先して2号店を南に出店した。

 今後、賢者の計画では、西と東、そして王城の近くに店を出す予定である。



 しかし店舗を増やすにあたり、人材育成や店舗場所の確保、ほぼ順調に来ていたしげる達を悩ます新しい課題が出てきたそれは。


『メニュー』


 今の状態は勇者達が、過去に大量に狩った高級な魔物肉それらを、しげるの能力で出した調味料を贅沢に使い、採算性度外視で提供している。キシリタール王国の住民に対する復興援助の目的でもあるので、しばらくはこのままのつもりだが、いつかは大量にある魔物肉(ストック)も切れる、その時に急に肉質が落ちれば評判も落ちるだろう。



 魔王との戦いで得た戦利品の資金も充分にあり、しげる達5人なら一生遊んで暮らせる生活ができるが、今後店舗数を増やせば、従業員が増え、商人との取り引きも増え資金がいる、いずれ戦利品の資金も尽きるであろう。

 しっかりと従業員の生活の為に給金を出し、商人と今後も取り引きするには、金が当たり前に必要だ。勇者達やしげるの助力がなくとも、利益が出る経営体質に変えていかなければならない。




「あぁ、メニューどうしよお。美味しくて、安い素材で作れるものかぁ。 もやし・豆腐とか。って、ステーキレストランでそりゃないか、いやぁ難しすぎるよお……」


 ウンウン っと唸りながら、2号店の営業終了後、現在は従業員の宿泊施設になっている、2階のしげるの部屋、ベッドに仰向けで寝そべり、思案する。


「僕の倉庫にある魔物のお肉は、もしこのペースで使えば、あと2ヶ月位でなくなっちゃうからなぁ……ヤバい、ヤバい、ヤバい!」


「こまったなぁ」


 枕に顔を突っ伏し、足をジタバタさせながら、しげるの夜は更けていくのだった


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