ステーキレストランを作ろう②
〜しげるのお掃除日記〜
掃除の1日目
ひどかった。
剣士さんが、ものスゴイ勢いでほうきを掃くから店中埃まみれで、本人も口がノーガードだから、もの凄く咽せていた……
あまりにも埃が舞いすぎてて、窓と扉を全て開けた状態にして、その日は終了にした。
「すまねぇだ、しげっち……」
珍しく面目なさそうな剣士さんに、気にしないでとコーラを出してあげた
「仕事の後のコーラは格別だぁ!」
って叫んでた、元気になってヨカッタヨカッタ
掃除2日目
剣士さんも勉強したのか、木目に沿って丁寧に、ゆっくりやってくれてた。
手が届かない高い所の掃除も、斬撃が飛ぶ飛剣を使い、天井を綺麗にしてくれた。
『飛剣一閃、天井蜘蛛の巣落とし!』
ってノリノリで叫んでて、中学生の掃除時間かな、って思ったけど掃除も順調だし、楽しそうだからほっといた。
拭き掃除も猛ダッシュで、雑巾がけしてくれて、あっと言う間に終わった。
剣士さん、がんばったのでコーラあげちゃう。
掃除3日目
あらかたの掃除が済み。
一応異世界にも、害虫っているんだろうと思い、賢者さんに魔法で店中の虫を、おびき出してもらった。
結果。
生涯トラウマになるほどの、夥しい虫の出現に僕は大絶叫してしまった……
その横で剣士さんと賢者さんは、勝ったほうが僕から飲み物の権利を賭けて、どっちがたくさん虫を捕まえられるか、平然と笑いながら勝負していた。
勝ったのは剣士さんだったが、僕にバリアを張ってくれた恩人の賢者さんにも、コーラとバリア代にお菓子を勿論出してあげた。
虫こわい……
〜掃除から4日後定食屋内〜
「ふぅ、これでとりあえず終了かな?」
掃除が終わり綺麗になった店内に、新品の四人掛けテーブルと椅子が10セット、予備の椅子が10脚運び込まれる。
「店内はカウンター席が10人分、テーブル席が40人分予備椅子で10人分。スタッフの動線を考えると、MAXで店内には55人位かな?」
もし店が繁盛して混んできたら、道路を管理する偉い方の許可が取れたら、店外にも簡単な飲食スペースを作ろうかな?
駐車スペースとかいるかな?
スタッフ何人雇おうかな?
店の未来を考え独り、ブツブツ呟き妄想に耽るしげる
剣士が筋力を活かし、建築用の木材伐採に行っていて、今日は替わりにしげるの護衛で賢者がいる。
その賢者は、テーブルの上に山積みされた研究資料を見ることなく、ニヤニヤしながら独り言を吐く、しげるの事を真顔でガン見していたのはここだけの話。
「飲食スペースも出来たし、明日の開店用に早速仕込みに取り掛かるぞ!」
【四次元倉庫】から肉を取り出し、手慣れた手つきで、下ごしらえしていくしげる。
魔王軍との戦後により物資は少ない。
さらにキシリタール王国は、魔王軍との戦い最前線であったため、物を輸出入する商人が大多数国外へ避難した。
流通元が断たれれば、それを販売する飲食・服飾・雑貨・小売業者が消える。
売る者が居なければ、買う者もいなくなり、人を対象にする、宿屋・酒場・娼館などのサービス業者も避難してしまった。
元々は相当に栄えた王都であったが、今は国の関係者や一部逃げ遅れた住民しかいない、ゴーストタウンになりつつあった。
最低限の必要物資は国が賄っていたが、本当に最低限である、まったく足りない。
『衣・食・住』とはよく言うが。
衣は、この際住民には多少我慢もらい、商人達が帰ってくるのを待つ。
ひと月以内には値段はそれなりに高いだろうが、これは解決するであろう。
住は、戦いにより孤児になってしまった者や困窮者に対し、教会に資金と食料を国と勇者と聖女の名で援助し、受け入れて貰う事で話合いをした。また孤児院や新たな住居スペースも建築中である。
食
しげるはこれにチカラをいれる。
人間飲まねば食わねば死ぬ。
疲弊した、キシリタール王国の復興の為に、頑張ってくれる作業者や、生活困窮者に当面、安価で提供する
また戦いにより夫を亡くした妻や、戦いで傷ついた者などに、このレストランで働いてもらい、少しでも雇用を確保する予定だ。
材料であり生命線の農作物を、提供してくれる農家には買い取り金額を増やす、農業従事者を少しでも増やすためである。
また賢者は【知恵の探求者】の能力で、少しでも収穫性が向上するように種や農作業具の研究をしている。
【四次元倉庫】リュックをまさぐりながら
しげるはメニューを考えていた。
「記念すべき1発目のメニューは何にするかな?
ファイティング・ポークの香草焼き。
フライング・チキンでタンドリーチキン。
レッド・カウのステーキ。
先に仕込んで提供する時に、手間のかからない焼くだけで済むほうがいいよね。
選べる3種でこれに、野菜スープ・サラダ・パンのセットでいいかな」
しげるの【生鮮スーパー】で呼び出せる食料は1日3キロが限界である。
よって軽い物、香辛料・調味料をいつも主に呼びだしている。
調味料などは高級嗜好品、大いに助かるのだが、軽くて高級品はいい、しかし呼び出せる容量上能力は補助、現地調達が基本である
今回のメニューのメインである材料
『パン』
王国経営のパン屋に、賢者が外国からかなりの量輸入した小麦粉を持ち込み、焼いてもらう、手間賃に小麦粉を無償提供している。
『野菜』
被害が少ない、やや遠方の村で採れた物を使う。とはいえ、まだ収穫量が少ない為貴重であるには変わらないが、栄養バランス上外せない、村には多めの小麦と物々交換している。
『肉』
大量の魔物の肉。
元々こちらの世界でも、食用にされていたが
しげる達には収納時で時が止まり、さらに無限に貯蔵できる【四次元倉庫】があり、その入れ物を満たし続ける強力な狩人達がいた。
またしげるは戦わないのでポーク・チキン・カウと呼んでいるが、実際には。
オーク・ワイバーン・ミノタウルス。
一体で10人以上の騎士・兵士であたるべき強力な魔物で、しげるが食べた味から勝手に名前をつけて呼んでるだけである。
人ひとりが、悠々入れる大きさの、金属性のボウル3つに蓋をし、指差し確認する
「ふぅ、肉類の仕込みは完了。
スープ・サラダは開店前にやって、パンは朝方くるから。釣り銭よし、掃除よし、食器類よし、食べ物よし、準備OK!
賢者さーん、氷魔法お願いします」
資料を机にまとめ、賢者が氷魔法を唱える
「ハイ、これで明日の朝まで冷えてるわよ
冷蔵庫ないと不便ね、作れないかしら……
あ、そうそう、頼まれてた従業員。
私が面接して、大丈夫だと思う3人雇ったわ。夕方位に来るから、顔合わせよろしくね。
あと私たち3人と、来る子達の3人分、追加で夕食お願いするわ」
その後やってきた、明日からお店の新看板娘3人と、簡単な自己紹介をする。
カンナさん
年は15歳、身長は140cmくらいかな? 小さいけど元気で素敵な笑顔だ。
カンナちゃんって呼んだほうが、見た目からして違和感なさそうだ。
ミラさん
年は20歳だそうだ、身長は僕と同じ位だから170cmかな? スレンダーな美人さんだ。
最後にセッリさん
年齢は失礼かと思い僕には聞けなかった……
恰幅の良い、THE食堂のおばちゃんって感じで、セッリさんはこの店のいいまとめ役になってくれそうだと思う。
そして仕事の流れを1時間程教えて、明日出すメニューを夕食にした。
「お、おいしい! 」
看板娘3人は声を揃えて、ものスゴく褒めてくれた
「ちょっとこの肉硬いわね」
「んだなぁ 漬け込みが足らんだぁ」
っと、賢者さん・剣士さんに言われ、ちょっとカチンときた僕は、リュックから【生鮮スーパー】でバニラアイスを出し、ケチをつけた2人に、僕と看板娘3人で食べるからと宣言。でも、アイスを羨ましそうに見てくる2人に、さすがに根負けして。
「わかったよ……アイス出すから」
と出そうとしたら
「待ちなさい、私 ストロベリー味」
「おらはチョコな、しげっち!」
味のご指定が入りました……