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古傷
お題:「傷」を使って《知りたくない》をイメージした作品。
「……気になりますか? この傷の理由が」
パチパチと爆ぜる焚火に照らされた兜の奥にある横顔を、甲冑に覆われたその背中を、食い入るように見つめた。
「我が君がお望みならお話しましょう。あれは3年前――」
彼はわたしの心を見透かしたように苦笑を噛み殺し、語り始めようとする。
背中の傷は武士の恥。
どんな時も刀の柄から手を離さない彼の、過去。
「うつけめ。わたしはもう眠い。また今度聞いてやる」
「おやすみなさいませ、若君」
迷いを振り切り背中を向け寝転がるとと、フッと笑う気配がした。
私には珍しく和風の時代物でした。
ただ、文字数の壁に阻まれてTwitterではうまく伝わらなかった気がします。無念。まだまだ修行が足りませぬ。