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嵐の前の祈り
「ざわめく」を入れて《心配》をイメージした作品。
強風で森の木々がざわめく。
木製のラジオが暴風雨に警戒を告げていたとおり、叩きつけるように大粒の雨が降り始めた。
古い家の雨戸は桟の劣化でキィキィと煩い。ずぶ濡れになりながら戸締まりをして入った家の中は心細くなるほど真っ暗。
タオルを頭から被って蝋燭に火を灯し、揺らめく炎の前で両手を組み合わせる。
神様、どうか。
あの人が無事に戻りますように――。
祈ったその時、写真立てがカタンと倒れた。
全然似合わない新品の軍服を着たあの人の写真が。
ターシャ・テューダ展を見に行った後だったので、古き良きカントリーな雰囲気を書きたかったのですね。うまく伝わったかは不安ですが。