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クセ

「遅かったのね」

「うん、急ぎの仕事が入ってね」


 すれ違う夫の髪からうちでは使ったことのないシャンプーの香りがふわりと漂って、胸が悪くなる。けれどそれを押し殺していつもどおりに振る舞う。


「夕飯はどうします?」

「うん……腹ペコ通り越しちゃったよ」


 夫は申し訳なさそうに頭を掻いて、耳を触る。


 ……ねぇ、あなた知ってる?

 あなた嘘をつく時、耳を触るクセがあるのよ。




 ねぇ、あの子はあなたのクセをいくつ知ってるのかしら?



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