表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

ばいめたのサブタイトルほかの元ネタに関するグローサリー的なアレ

作者: 冴吹稔

とある方からのメッセージで話題になったのですが、ばいめたの各話サブタイには、可能な限り古今のさまざまな創作物のタイトル、あるいは重要なフレーズなどを改変して、毎回の内容に合いそうなものを冠しております。


 ただこういうのは分かる人にしかわからないのが残念なところ。感想欄へのコメントでは全部分かる人には云々などと書いてしまいましたが、特にもとネタのないものも混ざっているため流石に皆様の反応を期待するのも難しいかと、思いなおしました。というわけで、突然ですがサブタイ解題コーナーです(どんどんぱふー)


(2013年某日の割烹より)

第一章

章タイトル「北方人のお荷物」


ポール・アンダーソン&ゴードン・R・ディクソンのユーモアSF小説「地球人のお荷物」です。かなり面白いので未読の方には是非読んでいただきたい。

英語だと「Earthman's Burden」。「北方人のお荷物」は「Northman's Burden」と訳できるのでなんというか完璧?w

 第一章にはとくに元ネタアリのサブタイは他にありません。しいて言えば

「崖の下の二人」が68年のオリコン1位ヒット曲「霧の中の二人」を連想させるくらいですかね。実は今始めてこの曲をストリーミングで聴いてます。ぬお、古くさw


第2章

章タイトル「海に出るつもりは無かった」


こちらは分かった人が多いかと思います。イギリスの湖水地方を舞台とした良質の少年少女小説、アーサー・ランサムの「ツバメ号とアマゾン号」シリーズ作品群から、「海へ出るつもりじゃなかった」ですね。


「『は』無かった」のほうの微妙なダメダメ感というか他所事感と言うか、そういったものが伝わっていれば幸いです。


・第8話「彼と彼女の家の事情」

 94年のテレビドラマと96年の少女漫画にそれぞれ酷似したタイトルがありますが、とりあえずは少女漫画「彼氏彼女の事情」のほうで。いわゆるカレカノですな。家の、ってつけると急にロマンチックじゃなくなる事情、ご理解ください!


・第10話「鎖蛇号と川獺号」

はい、これはもうそのものズバリ、「ツバメ号とアマゾン号」ですね。川獺かわうそとオウッタルの関連性については「オッタル」をwikipedia辺りで調べてください。

元ネタの船のほうも、オウッタルのクナル2隻「女傑号」と「海燕号」としてちゃっかりご登場いただいてます。


・第12話「恋と侠気と遺失物」

井上堅二さんのライトノベル作品「バカとテストと召喚獣」の各話サブタイパターンを踏襲しています……ってまあ、関連性の薄そうなものを3つ並べると大体そんな感じになりますが。

・第13話「難破船のシグリ」

特に元ネタは無い……はずだったのですが、軽く検索したところ「難破船の少年」と言う絵本がある様子。まああるだろうなあ。


 ちなみに私は海難事故などのシチュエーションでの自己犠牲パターンが嫌いです。洋上でサバイバルを強いられる状況が予想されるときに、子供を残して大人が波間に消えるとかアホかと。


さて、第3章からはかなり意識的にサブタイにパロディーを仕込んでますのでてんこ盛りです。


:第三章 ミクラガルドの騎士


ミクラガルドとは、ヴァイキングたちが東ローマの帝都、コンスタンチノープルを憧れと畏敬をこめて呼んだ美称。大いなる都、とかそんな意味です。

 騎士、と言う言葉は甲冑をつけた「ナイト」ではなく、ここでは宝塚歌劇に原点を持つ手塚治虫先生の古典的名作、「リボンの騎士」の『騎士』を意識したタイトル。


 つまり、現実にはハザール可汗国の皇女に過ぎないイレーネに、母の母国である東ローマに帰属するイメージを付与しつつ、彼女が男装ヒロインとして登場することを高らかに宣言する章なのでありました。


・第14話 村と彼女を守る幾つかの方法


彼女を守る51の方法 マイクロマガジン社 渡辺実/彼女を守るプロジェクトおよび、それを原案にした古屋兎丸のコミック。(タイトル同じ)


阪神大震災の教訓を踏まえて書かれた初歩防災マニュアル的な本でした。コミック版ではクラッシュ症候群についての解説が印象的でしたね。


・第15話 克服さるべきもの


 ポール・アンダーソンのタイムパトロール・シリーズ、ハヤカワ文庫版無印の最終話タイトル「滅ぼさるべきもの」

 近年になってやっと気がついたんですが、ローマの政治家大カトーが演説の最後に必ず付け加えたという「それにつけてもカルタゴは滅ぼされるべきである」という発言からなんですな。

 劇中では滅びなかったカルタゴがローマを圧倒し、一神教的世界観に基づかない擬似的な科学文明が栄えた時間線に主人公エヴァラードたちが迷い込んでました。


・第16話 新たなクナルが旅に立つ


79年に放映されたTV用アニメ映画「宇宙戦艦ヤマト・新たなる旅立ち」の主題歌、「ヤマト!! 新たなる旅立ち」(ささきいさお)の歌い終わりフレーズから。


考えてみれば「危機に瀕した故郷を救うために選ばれたメンバーが船で旅立つ」って、まんまヤマト一作目のストーリーと同じパターンなのだった。いやあ、道具立てが変わると全然印象が違っちゃう物ですな。


17、18、19話は特にネタ元なし


・第20話 立ち並ぶ悪魔の碾き臼の間で


ウイリアム・ブレイクの詩「エルサレム」の第2スタンザ後半


And was Jerusalem builded here

Among these dark satanic mills?


からの引用。


 悪魔が人を責め苛むための碾き臼が立ち並ぶ邪悪な世界に、聖地エルサレム(に代わる楽土)を築こう、というほどのことを歌ってる詩なのですが、ブレイクがこの詩を書いた1800年代初頭、産業革命期のイギリスの状況をも踏まえた詩句らしいです。

 イレーネが一年以上の間味わってきた逃避行の苦難と、追いかけてくるバルディネスの野心、北欧の寒々とした野蛮な世界を一言で表すにふさわしい句ではないかと。


20話ラストでトールが自分には影も形もない、と述懐する「精神の戦いを斬り進むための剣」も、同じ「エルサレム」の詩句に由来しています。

リンベルト師の教会は果たして北欧の蛮族たちにとってのエルサレムの礎になりえたのか、それは歴史を紐解いて考えるしかありません。


・第21話 Red herring


 まあ劇中でも述べたとおり、「燻製ニシンのまやかし」と言う有名なイディオムにちなんだタイトルです。この時代、英語がまだ成立以前でもちろんイディオムもまだなのはご愛嬌。つまりこのタイトル自体がRed herringだったんだよ!


・第22話 スキャルドボルグ(盾の壁)は崩せない


 このパターンのタイトルを持つ創作物はそれこそ山のようにあるので、もはやどれが元ネタとも言いづらいです。

とりあえず、強いてあげるならJOJO第4部の「ダイヤモンドは砕けない」かなあ。


・第23話 デーネヴィーケの彼方へ


 実のところこのタイトルには元ネタがない……のですが、どうやら無意識に覚えていてタイトルの下敷きにしたらしいものがありました。2000年のアメリカ映画「オーロラの彼方へ」です。

 観てない自分には正直語る資格がないので、興味のある方はインターネットムービーデータベースあたりで概略をどうぞ。


 通信も交通も未発達な時代に再会を約して別れる結末に、微妙にあっているようなあっていないような趣。


第4章

章タイトル:AD9世紀のマイスタージンガー←ニュルンベルクのマイスタージンガー

有名なワーグナー作品(だったと思う)から。DOLの冒険クエスト「ハンブルグのマイスタージンガー」にはかなり抱腹絶倒した。あの「そこにあるリソースで何とかする」感は見習いたい。


・ロリとギャマンと商人衆←バカとテストと召喚獣

またしてもこの作品から。いいかげんにしろと言う話である。予告では「ロリとギターと商慣習」だったんだがギター買うまでたどり着かなかったのだ


・ムスタファの楽器店←イシャーの武器店

ちゃんと読んでないんで説明がめんどくさいのだが、ワイドスクリーンバロックと呼ばれるジャンルの代表の一つとされるSF小説である。藤田和日郎さんの「ゲメル宇宙武器店」もたぶんアレを意識してるのだろう。もっとも、ネタ的には横田順弥さんの「宇宙のファイアマン」からのごっつぁんなのだと思うが。宇宙ではアルミが貴重で一円玉が云々、と言う奴である。


 ちなみにムスタファ・イブン・アリー・アッ・グレキというフルネームにはアマチュアバンド野郎の御用達国内楽器メーカーの名前が三つ織り込まれている。分かる人にはわかる。


・スカベンジャー・ザン・ヴァイキング←ストレンジャー・ザン・パラダイス

例によってちゃんと見てない映画のタイトル。済まぬ。

まあ「ヴァイキングと言うか死肉あさりというか……」といったニュアンス。


・デンマーク沿岸、竜船との死闘←スペイン高速悪魔との死闘

バルログ「ヒョーッ!」……ではなく、本編あとがきでも述べたとおり、アル・ディ・メオラの名曲からである。


・謁見

・寛解


 2話で1セット、そして漢字2文字。そう、平成ライダー一作目のアレのパターンの剽窃だ。この後出てくる蓬髪王ハラルドは、あの作品のラスボスの不完全体(もしくは「中間体」)をイメージして書いた。ってことはオウッタルは完全体のほうである。スゴイコワイ。


・ともし火をかかげたくて~ハルシといた日々←ともしびをかかげて/ハラスのいた日々


 ローズマリ・サトクリフの名作小説と、日本の、実のところ私があまり好きじゃない系のドキュメンタリー。混ぜたら何でこうなった。洸海先生の腹筋を破壊した殊勲のタイトル。してやったり。


 ちなみに本文中でトールが幻視する「哄笑しながらぐるぐる廻る『馬頭観音と雷神トールが習合した全く新しい神仏』」の元ネタは諸星大二郎の伝記SFマンガ「暗黒神話」の餓鬼調伏シーン。


章タイトル:北海ヒッチハイクガイド←銀河ヒッチハイクガイド

 残念ながらアンスヘイムが宇宙を漂流したりはしない。某所でネタに反応してくれた人がいて嬉しかった。


・今にも落ちてきそうな曇り空の下で←今にも落ちてきそうな空の下で

JOJOの奇妙な冒険第5部のサブタイ。同名の楽曲が有るようだがどっちが先か判然としない。

 フリースラントって処は本当に季節によっては無茶苦茶天気がぱっとしないらしいのであった。


・そして三人が居残った←そして三人が残った

 P・ゲイブリエルの脱退以来次第にメンバーが減っていったGENESISがとうとう3人になったときのアルバムタイトル。


・楽師、寒村に児女を扶けて鵞鳥を焼き 血斧児、沼沢に依って金甲神将を得る

 これはちょっと判りにくいけど西遊記や水滸伝など中国古典の講談本におけるタイトルの形式を模倣したもの。よく見るとこの回だけ第37話ではなく第37「回」になっていますw


・Here Comes The Flood

 プログレッシブロックの立役者、ロバート・フリップとP・ゲイブリエルのコラボレーションアルバに収録された楽曲のタイトル。後にゲイブリエルのソロアルバムにも収録されましたが、バージョン違いのフリップ参加版のほうが私は好きです。

 この歌詞の中で歌われるfloodは単なる洪水ではなく、定冠詞「the」があるところから察するにノアの洪水に匹敵するような人類全体の文明と営為を押し流すようなカタストロフだと思われます。味わい深い歌詞なので探して読まれると良いかと。


・堕天使にコミックソングを←天使にラブソングを

 ウーピー・ゴールドバーグ主演のコメディ映画。「堕天使」は拙作中のハキエルに対応してます。

・トール、船を買う←フリーター、家を買う

見たまま。


・ときめきの面影

 80年代に結成されたプログレバンド、ASIAの楽曲「Here comes the feeling」の邦題。煮たような英文タイトルが接近して続くのを避けて邦題のほうにしました。イレーネの消息を聞いてトールが思い浮かべた彼女のイメージを踏まえています。


・旅芸人の余禄←旅芸人の記録

 テオ・アンゲロプロス監督のギリシャ映画のタイトルから。イレーネの軽業芸の後に残った観客からトールが小銭を稼ごうと試みかけた事を受けてこのタイトルに。


・ウェセックス王国の巨大戦艦を制圧せよ

 クライヴ・カッスラーによる冒険小説「ダーク・ピットシリーズ」の作品にハヤカワ書房で冠した邦題のパターンを模倣。

「古代ローマ船の航跡をたどれ」「QD弾頭を回収せよ」とか大体そんな感じ。

 ああいうかっこいい冒険小説書きたいですなあ。


随時改稿、増補していきます

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ