少女
私は世界が嫌いだ。生まれた時から人に嫌われ、蔑まれ、殺されかけたこの世界が嫌いだ。
死にたい。そんな気持ちで喉元に刃を向け喉を貫いた、が死ねない。不死の呪が生まれた時から掛けられていた。ふと鏡を見ると腰あたりから無数の刃が生え、二本の鞭のようなものが垂れ下がっていた。その刃達は思ったとおりに動き鞭も同様に動く。
生え出した頃は上手く体内に収納する事が出来なかったが、五ヶ月後には自在に操れたのだ。
その頃にはもう研究機関に少女の存在は気付かれ、家に研究者たちが押し寄せ、家族や関係者を皆殺しにしたのは暑い八月のこと。少女はまだ齢十二歳だった。
母親は殺されず、我が子を数千億と言う大金で売り払い、新しい男と遊んで暮らした。余のショックやストレスで髪は白く変色し、その眼差しには一切の光はなかった。それを知ったのは九月の頃、少女はまだ齢十二歳だった。
少女がいた研究所である事件が起きた。
研究者並び、研究関係者総勢二千八百人が死亡。被検体は逃亡。治安警備隊は被検体の抹消、事件の即刻解決を報道した。だが、それでは甘かった。被検体は最低五百体は居る。その中で最悪なのは齢十六歳の少女である。
少女は外見や口調は大人しく優しそうだが、背後にある刃達と鞭で獲物を引き裂く事を楽しんでいる。非常に危険なものである。
「許さ無い。許せる訳無いでしょ?私を売ったあの女を、逃げたあの男をこの手で殺すまでは」
その声は砕けて聞こえなくなりそうな声だった。