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まとめ作業はシャルロッテとマルガレーテが手馴れていたため、思ったよりも早く片付いた。
意外なことに、ヴェント青年団三人組が情報整理に長けていた。乱雑なメモ書きを種類別にまとめてくれたので、ギルドが開くまで仮眠がとれそうな感じだ。
「凄いな」
短時間の間にしっかりまとめられた報告書を見ながら、俺は思わず呟く。
「ふっ、日夜あの蔵書を管理する我らに死角などない!!」
「ヴェントの青少年の性癖を満たすあれらを種類別に管理しているからな!!」
「日々の鍛錬の結果だ!!」
どんな鍛錬の仕方だと言いたいのを飲み込む。やり方はアレだが、充分役に立っている。
「それにしても、とんでもない量じゃのう」
Mのじいさんが地図の山を見ながらこぼす。
シャルロッテたちが調べたところによると、あの洞窟も結構な広さを持ち、調べ切れなかったらしい。分かれ道から先が空白の地図がかなりの量ある。
「そうですね。ギルドの人員も限度がありますし、ヴェントのみなさんに協力してもらうしかないかもしれません。地図的に昼間の間は迷宮と地下洞が繋がることはないので、昼間の探索をしてもらいたいですね」
シャルロッテも地図の山を見て嘆息する。
「農閑期だから協力を仰ぎやすくはあるが、マッピングをするとなると、全くの村人にはキツいだろうな」
完全な初心者に地下洞窟という地形のマッピングはハードルが高い。
「それなら、我々ヴェント青年団がこの場所のマッピングを引き受けよう」
「ギルドに報告駄目絶対!!」
「我らの本は我らが守る!!」
くわっと、青年たちが言う。こぶしを握って、結構真剣に言っているのだが、しかし、安定のチュニック覆面で台無しである。
「まあ、問題ないようならそっちは任せた」
該当箇所の地図を青年たちに渡す。
昼間ならば迷宮に出ることもないだろうし、彼らだけで大丈夫だろう。まとめ作業でマッピングの知識もあることも分かったので、異を唱える者もいない。
「それじゃあ、ギルド開くまで俺たちは寝るか」
「はいはいはい!!いっそ、寝ずにイイコトしましょう!!」
それまで黙っていたクセにとんでもないタイミングで、これまたとんでもないタイミングでマルガレーテが言ってきた。
「俺は寝る!!」
「くそ!!ばばあなんざ、うらやましくないんだからな!!」
「そうだぞ!!うらやましね!!」
「三次は惨事、三次は賛辞、三次は惨事」
約一名はぼそぼそと自分自身に暗示をかけ始めて、カオスである。
「マルガレーテちゃん、日も昇ってしまいましたし、諦めて寝ましょう」
シャルロッテがマルガレーテをなだめれば、あっさり引き下がる。
「それでは、マルガレーテの王子様、今晩のお楽しみですね!!」
「アリスさんもMさんもクラウディオさんの配偶者なので協力を仰げば、押さえ込めます」
なんの協力を仰ぐ気だと、怖くて聞けない俺は、さっさと部屋に戻って仮眠を取ることにした。




