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迷宮に入り、マルガレーテたちと合流したが、時間的に探索を切り上げることにした。
マルガレーテが内側からマッピングした地図には、天然洞窟に繋がる箇所が何箇所かあったのだが、夜明けが来ると、壁的に出られなくなる可能性があるため、後回しにするしかないのだ。
「それにしても、この短期間でよく調べられたな」
ほぼ完璧と言っていいほどの地図に思わずそう言うと、マルガレーテがぱああっと明るく笑う。
「それはもう愛妻として、少しでも役に立ちたいですから!!ご褒美はベッドの中で!!」
続くセリフがなければ、良かった。
「おい」
「……ナスターシヤも頑張った」
どうしてくれようと考えていると、ナスターシヤにローブを掴まれる。上目遣いに何かを訴えかけてくるが、多分それは知らない方が俺のためだ。
「……ベッドでごほうび」
「っておい!!完全に教育上駄目な感じになってるだろ!!」
「クロ助、大丈夫だよ!!ナっちゃんもクロ助の奥さんだもん!!」
「余計駄目だろ!!つか、それ、俺が駄目な感じになってるだろ!!」
「マルガレーテの王子様、愛妻と幼な妻でマンネリ化が防げます!!」
誰かこいつらをどうにかして欲しい。
俺がげっそりしていると、気がついたプリちゃんが何かを差し出してきた。
こんにゃくとアブノーマルな本です。本当にありがたくないし、イロイロおかしい。
「おい」
思わず受け取ってしまった俺に、プリちゃんが、ぐっと右手をあげる。多分、指があれば親指を上に向けている。藁人形なのでそのあたり大雑把な作りで分からないのだが。
「いや、どう考えてもこのタイミングで渡すもんじゃないよな?!しかも、思いっきりお前の性癖丸出しってか、どんな藁人形なんだよ?!」
突っ込みが追いつかない。
とりあえず、それらをプリちゃんに投げつけると、一旦町に戻ることにする。
プリちゃんと分かれて、迷宮から出れば丁度夜明けで、うっすらと向こう側が白くなっていた。
「この時間ならシャルロッテたちも帰ってきているだろう」
そう俺が呟いた通り、シャルロッテたちも戻っていた。蘇生するだけの簡単なお仕事を抱えて。
宿屋に戻った俺を迎えたのは三つの屍だった。回れ右をしなかった自分を褒めてあげたいくらいには酷い出迎えである。
「ケロの字ごめん!!やっちゃたんだ!!」
Mがあやまってくる。本当に殺っちゃったなとの感想は飲み込んで変わりに嘆息をこぼす。
「メロディを怒らんでくれ、これには深いわけがな」
「足を滑らせたMさんの下敷きになったんです」
シャルロッテの言葉に納得してしまった。迷宮慣れした俺ですら、Mの下敷きは瀕死確定だ。それがただの村人っぽい青年たちなら普通に即死だろう。
しょんぼりするMが少々可哀相でもあるので、さくさく蘇生する。
「っは、死ぬかと思った」
「死んだ!!絶対死んだ!!」
「……ろりにつぶされたかった」
なお、彼らを慮った結果、チュニック覆面はそのままにされていたため、起き上がる彼らは結構シュールな感じになっている。つか、その覆面がなければ、Mを避けることができたんじゃないかという気もしないでもない。
「一通りマッピングしてきた。ギルドが開くまで、まとめるぞ」
「そうですね。アリスさんとMさん、ナスターシヤちゃんをお願いします。まとめ作業なら、私たちで進ませますから」
「うん、じゃあそうするね!!」
シャルロッテの申し出にアリスが返事をして、Mとナスターシヤを連れて部屋に戻っていく。
その後はMのじいさんとヴェント青年団の三人組を含む残りのメンバーで地図をまとめていった。




