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夕食を済ませると、三手に分かれて探索に出ることになった。
シャルロッテにMとじいさん組はヴェントから地下洞窟に下りるため、宿屋前で分かれる。
Mのじいさんが説得してくれたおかげで、ややマシになった青年団もマッピングを手伝ってくれることになったので、結構にぎやかだ。
「アレを見られたら死ねる!!」
「ばばあとは言え女に探らせるとか鬼畜の所業だぁあああ!!」
「くっそ!!こっちにはロリがいないのか!!」
発言がイロイロ不安だが、Mのじいさんもいるし大丈夫だろう。
「だから、その道具袋で殴りかかるのをやめような?!」
どす黒いオーラを纏いながら、道具袋を振りかざすシャルロッテに自制を呼びかける。本当にこいつら大丈夫だよな。俺、帰ったら魂を召還する簡単なお仕事しなくてもいいよな。
不安というか嫌な予感を残しつつ、ヴェント迷宮入り口まで向かう。
入れば、プリちゃんがのの字を書きながら待機していた。多分この藁人形に突っ込んでは駄目だ。
「それでは、あたしとナスターシヤちゃんは、あっちから探索して行きますから、マルガレーテの王子様とアリスさんは時計回りにお願いします」
がしっと、プリちゃんを鷲掴みにしながらマルガレーテが言うので、そこで二手に分かれた。
「クロ助と迷宮ヒサビサだね!!」
分かれて三歩でトラップを踏みながらアリスがのたまう。感傷だとかんな感情が湧くはずもなく、急いで冷静にアリスを蹴飛ばす。
「いきなりトラップ踏んでんじゃねーよ!!」
「あ」
「って、言ってる側から何やってんだよ!!動くな!!」
どうしよう。数分で俺がボロボロである。
アリスは物理防御が高いため、蹴飛ばしつき飛ばしで庇ったところで、全くダメージを受けていないのだ。これ、モンスターが湧くペースが遅かったら、俺のHPがピンチな感じだ。
しかし、アリスのトラップの引っかかり率の高さのおかげで、昨日の探索で見つからなかったトラップまで見つけてしまった。マッピングしておいたので、今後誰かの役に立つだろう。
「って言うか、探索スキルないのに、トラップ発見率がやばいことになってるぞ」
「おおー、ここ密度高いんだね、あ」
感心しながら新たなトラップを踏んでくれるアリスは最早トラップ探査機だ。
しかしそれにしても異様な多さだ。
「このトラップは迷宮ができる前に仕掛けられていたモノが取り込まれたのか?」
天然でできたにしては余りにも多すぎるので、ふとそんなことを考えてしまった。
「あのすんごい痴女の本?」
「マッパで他人の布団に潜りこんでくるお前にだけは、痴女と言われたくないと思うぞ」
まあ、マルガレーテがその上を行くアレな言動なので、相対的に普通な気もしてきているのだが。
「むー。でも、隠したいなら、わたしならトラップ仕掛けるかも」
きょろきょろ辺りを見ながら、アリスが言う。
「でもでも、自分で引っ掛かちゃうから、別に自分専用の通路が欲しいかな」
「別の通路か」
移動する壁を見ながら考える。
もしかしなくとも、ここにアノ類の本を隠したやつらとアリスの発想が一緒かもしれない。
「アリス、一通りトラップの配置をマッピングして、検討をつけていくぞ」
「りょーかい、あ」
そしてアリスがトラップを踏み込むが、多分きっと順調にちがいない。




