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闇属性僧侶のあんまり平穏じゃない日常  作者: 水可木
八章 迷宮と新手の試練
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 宿屋に戻ると、案の定、肩が脱臼しているじいさんたちが転がっていた。

「おお、あれじゃ、新たな扉が開く……」

 親衛隊のだれかが言うが、多分それは開いちゃいけない扉だ。

「あ、クロ助!!おじいさんたちよろしく!!」

「よろしくじゃない!!加減しろ!!」

 俺は青年たちをその辺りに転がして、じいさんたちの治療を始める。治療と言っても、外れた肩をそのままはめるだけの作業だ。

 うめき声があがるが、外れたままよりはマシだろうと、スルーしててきぱきはめていく。

「お、鬼だぁああ!!」

「これはひどい!!」

 青年たちがなんかほざいているが、気にしない。じいさんたちも、コレ二回目なんで、そろそろ自業自得な気もしてきているのだ。

「そういえば、ケロの字、その人たちはなんだい?」

 自分のじいさんも呻いているというのに、そんなコトなどないといった様子でMが訊ねてくる。

 床にころがる、上半身裸のチュニック覆面の男どもはたしかに突っ込みどころ満載だろう。

「ひっ!!」

「肉襦袢だと……」

「やばいマジやばい」

 ムキムキのMに戦意消失の青年たちがガタガタ震え上がる。お前ら、さっきまでシャルロッテやマルガレーテ相手に強きだっただろうがと言いたい。

「いや、往来の邪魔になっていたから、Mのじいさんにでも回収してもらおうと思ってな」

「そうなのかい?」

 シャドウ・バインドで動けない男たちをMがつんつんつっつく。本人は人差し指で加減しているつもりだろうが、鍛えた火属性のつんつんに男たちのHPが削れている。少し前のシャルロッテの攻撃とあわせて瀕死状態だ。

 ほっとくと死にそうなので、薬草を使って回復させてやる。僧侶職ながら、俺の持つHP回復スキルはドレインのみなので、こういった町中だと薬草を使うしかないのだ。我ながら純闇の僧侶職は本当に地雷だと思う瞬間である。

「やばいやばい。こんなモンスターの前に差し出すなんて聞いてない!!」

「卑怯だぞ!!こんな筋肉怪人に突き出すとは!!」

「まさか、噂の赤き怪人なのか?!」

 ムキムキとは言え年頃の女に向かってその発言はイロイロアウトだ。

 一応、ムキムキでメロディなどと言う名前だったりすることを気にするMは青年たちの言葉にうつむく。

 あ、これどうやって慰めようかと思っていたのだが。

「そんなに褒めないでおくれよ!!」

 何故か照れていた。いや、コレ褒め言葉だったのか。俺の心配を返せ。

「つーか、赤き怪人ってなんだ?」

 嬉しそうに筋肉を見せ付けてくるMは、気にかける必要ナシと判断して青年たちに訊ねる。

「な……なんだと?!貴様、あの恐ろしい怪人の噂を知らないのか?!」

「フォレボワとか言う町に住まう怪人で、色町行きの馬車を襲撃する恐ろしい筋肉怪人だぞ?!」

 どう聞いても受付嬢です。ありがとうございました。って、あの人、他所の町まで噂になるほどナニやってるんだ。

「心当たりあるが、あの人はMよりも人外規格の肉体だ」

「ああ、フォレボワの受付嬢かい?」

 あの筋肉は素晴らしいとうっとり呟くMは、更なるガチムチを目指している様だ。ますますメロディちゃんから遠ざかっていくが、本人がいいのならば俺はナニも言うまい。

「ぬぁああああ!!お前たちは桜桃男子ゆにこーんどもではないか!!」

「ジョルジェットたんの家にナニしに来た!!」

「ここで会ったが百年目!!」

 復活した親衛隊のじいさんたちが、突然わめき出す。床に転がっている次点で、不可抗力で連れてこられたのが丸分かりだと思うのだが、じいさんたちは戦闘態勢に入る。人様の家でなにやらかす気だ。

「アリス、M、じいさんたちが肩がこるって言ってるぞ」

「え?肩たたきしてもイイの?」

「その、なんだい、やってもいいのかい?」

 腕まくりをして肩をまわしていたじいさんたちが、とたんにおとなしくなる。

「コルテッロ君、なんと恐ろしいことを!!」

「ワシら死ぬ!!こんどこそあっちの花畑に行く!!」

「ワシら生まれは違えど、死ぬときは腹上死と誓っておるんじゃ!!」

 とりあえず、じいさんたちの戦意を削ぐことには成功した。最後の発言に関しては、聞かなかったことにする。

 


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