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宿屋に戻れば戻ったで、Mのじいさんと「ジョルジェットたん親衛隊」との間で仁義なき戦いが勃発した。
スルーしたいが、入り口で言い争ってくれるので、立ち退くのを待つしかない。年齢が年齢のため、シャドウ・バインドをかけるのも躊躇われるのが厄介だ。
「貴様はヴェント青年団とかいう桜桃男子とつるんでいるらしいではないか!!」
「ええい。我らと奴らは敵同士!!」
「中古は認めないと標榜する奴らの仲間に、ジョルジェットたん会わせると思ったか!!」
親衛隊のじいさんたちがまくし立てる。
おい、孫の前でなんつー話してるんだ。
「ふっ。甘いの。ワシはジョルジェットたんの孫の妻であるこのメロディの祖父なんじゃぞ」
くわっとMのじいさんがのたまうが、いつMが俺の妻になった。大勢の前では反論しようにもMに恥をかかせてしまうので、できない。
Mはと見れば、嬉しそうにこっちをちらちら見てくる。俺とMの間に並んで立っているナスターシヤ、シャルロッテ、マルガレーテ、アリスが揃ってにやけ顔なのが怖い。こいつら、なんか共謀してやがる。
「な……なんじゃと、それではこいつがジョルジェットたんの身内になったというのか……」
「くっ、なんと言う悲劇!!」
喜劇を繰り広げるじいいさんたちが、そろそろ本格的に鬱陶しい。
「まあまあ、皆さん、いいかげんにおし。おかえりなさいねぇ、コルンバーノ」
「「「「分かりました!!」」」」
じいさんたちが息ぴったりに言う。無駄に訓練されすぎだ。
アリスなんぞは「おお!!」と目を輝かせてみていたが、目を合わせるんじゃない。そっとナスターシヤの視界を遮るマルガレーテはこういうときに頼りになる。
「部屋行くぞ」
なんとか出た俺の声は疲れきっていた。
「そうですね。明日は朝一でギルドですし」
「マルガレーテの王子様、今晩は希望とかあります?ほら、マンネリ化を防止するにはバリエーションは大事です!!」
「静かに寝ろ!!」
「それって、やっぱりマグ……」
「言わせねぇよ!!!」
さっきまでこいつにあった常識が来い。
「じゃあ、わたしとエっちゃんはおじいさんたちとブラックジャックやってるね!!」
「金は貸さないからな!!」
「クロ助のおばあさんに借りるから大丈夫!!」
「大丈夫じゃない!!」
「コルテッロ君、安心するんじゃ、わしらジョルジェットたん親衛隊はジョルジェットたんの身内に金品を要求なんざせんからな」
「せいぜい肩叩きを要求するくらいじゃ」
俺がアリスとMをひっぱて行こうとすると、親衛隊のじいさんから待ったがかかった。色々突っ込みたいが、無駄に終わるのは目に見えているので、飲み込む。これ以上、精神を疲弊させたくない。
「分かりました。アリス、M、程ほどにするんだぞ」
「やったー!!」
「任せときな!!」
翌朝、起きた俺たちが目撃したのは、肩を脱臼させたじいさんたちだったのは言うまでもない。




