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闇属性僧侶のあんまり平穏じゃない日常  作者: 水可木
七章 迷宮と問題の山
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 結論から言うと、犯人はプリちゃん人形だった。

 迷宮内から出ずに投擲で捨てた辺りで予想はしていたが、ナスターシヤの居住区画に戻ってきたときは色々突っ込みたかった。

「お帰りー。わたしの夜食!!」

 プリちゃん人形に続いて戻ってきた俺たちを見つけたアリスが、開口一番のたまった。

「お帰りなさい」

 声で気がついたのだろうシャルロッテがキッチンから出てきて言う。その手の中の作りかけのニョッキについては突っ込んだら負けだ。

「ああ、これですか。冷凍保存用です」

 俺の視線に気がついたシャルロッテが言うが、永久保存してもらいたい。

「それにしても、早かったね!!」

「ああ、有害図書を捨てた犯人を追ってたら、ここに着いたんだ」

 アリスがいそいそとテイスティ・マーモットの肉を俺の道具袋から取り出しながら言うので、答える。

「有害図書ですか。マルガレーテちゃん、ちゃんとクラウディオさんの好みは把握できましたか?」

「把握する前に塵にしちゃった」

 そして、お前ら本人を前にナニを話してやがる。コレあれか、羞恥プレイなのか。

「あ、クロ助、プリちゃんが、凄くうらやましそうにしてるよ!!」

 アリスに言われて、プリちゃん人形の方を見れば、悶えていた。本当にこの藁人形どうしてくれよう。

「アリス、プリちゃん人形がこっから出た時間とか分かるか?」

「んー、わりとさっきだと思うよ?本当についさっきまで、一緒にポーカーしてたもん」

 どうしよう。突っ込みどころが多すぎて、俺の手に負えない。つか、ポーカーできるのかよ。

「ナっちゃんも寝ちゃって、シャル子はニョッキ製造だし、プリちゃんが相手になってくれたんだよ!!」

 なお、アリスの道具袋がぺらっぺらなことから、プリちゃんが勝ったようだ。本当にどっから突っ込めば良いんだろうか。

「プリちゃんに寄り道する時間はなかったのか」

 俺は少し思案すると、プリちゃんの部屋に飛び込む。俺一人で突入したのはせめてもの情けだ。

 プリちゃんの部屋に入ると、案の定、本が山積みされていた。表紙からして、子供には見せられない類のモノだと分かる。

 俺の突然の行動に一時停止していたプリちゃん人形は、何があったのか気がつくと、物凄い速さで俺と本の間に割り込む。

「あれか、迷宮内で集めて、飽きたら捨てていたのか?」

 俺が尋問すると、迷宮内で集めていたことは認めたが、飽きたらというのには否定を示す。

 どういうことだと考えていると、おずおずとプリちゃんが本を差し出す。

 受け取ったソレは、どう見てもアブノーマルです。ありがとうございました。

 思わず、俺が床に叩きつけるレベルにはマニアックだった。なにが悲しくて、ひも付きのボンレスハムみたいな野郎の画を見なくてはならないんだ。

 俺がたたきつけた本は、一瞬でプリちゃんに回収された。プリちゃんは頬をよせてスリスリしていたが、ドン引きである。本当にこの藁人形、末期だ。

「趣味じゃないのを捨てていたのか」

 再度訊くと、今度は肯定する。

 そして、プリちゃんが少し離れた場所を指せば、そこにはマリアさん製のえげつないアイテム類が置いてある。アリスとやったポーカーでの戦利品だろう。

「そのアイテムを置く場所がないから、捨ててきたって訳か」

 察して言えば、プリちゃんが嬉しそうにうなずく。

「まあ、ナスターシヤに見つからなければ、良いんじゃないか」

 アブノーマルじゃないとは言え、俺にも心当たりぐらいはある。嘆息しながら言うと、プリちゃんはひっしっと両手を掴んできた。お前本当に藁人形かとの言葉は飲み込んで、プリちゃんを引き剥がす。

 俺とプリちゃんが部屋から出ると、モノ音に起きたのだろうナスターシヤがこちらに来ようとしているのを止めるマルガレーテの図があった。

「あ、マルガレーテの王子様、どうでした?」

「出所はここであってた」

「良参考書は?!」

「ねーよ!!」

 じっくり見ればあるかもしれないが、絶対に言わない。言ったらイロイロ最後だ。

「クラウディオさん、話はマルガレーテちゃんから聞きました。天然洞窟ですか。厄介ですね」

 そして、シャルロッテはマイペースに話を進める。俺にとっては助かるので、そのままありがたく話しに乗る。

「ギルドは把握してないだろうしな。報告しに一旦戻るか」

「そうですね。Mさんのおじいさんも送り届けなければいけませんし」

 ヴェントの迷宮に入ってこの短期間でこの問題量である。頭痛がしてくる。

「ああ、壁が閉じてしまわないうちに、回収に行くぞ」

「わかりました。すぐにキッチンを片付けてきます」

「シャルロッテ、あたしも手伝うからね」

「じゃあ、ナっちゃんはわたしと準備しよう!!」

「……する」

 とりあえず、一つ一つ片付けるべく俺たちはヴェントの町へ向かうことにしたのだった。

 

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