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俺の目の前には肌色の塵がある。そして、俺の後ろにすっきりとした表情のマルガレーテがいる。
本当にコレ、どうすんだろう。
塵になった本の中には、一人のときにこっそりお世話になりたいものもあったが、問答無用で切り刻まれた。
そんな俺に気がついたマルガレーテが、われにかえる。
「もしかして、マルガレーテの王子様の好みのモノがあったんですか!!それなら、そうと止めてくだされば、参考書にできたのに!!」
「止める間もなかったよなって、年頃の娘がなんつー発言してんだ!!」
ただ、年頃の娘らしくされても、それはそれで俺が居た堪れないが。たとえ、他人のモノだとしても。
「否定しないって、ことはやっぱりドストライクの良参考書が!!分かりました、復元しましょう。切り刻んだだけなので、パズルのように組み立てれば元通りです!!」
「何年かける気だ!!つか、これ以上はやめろください」
色々俺の精神に対するダメージがやばい。フォレボワ宿屋の自室に置いてすらいないこの手の本がマーガレットさん辺りに発掘される被害妄想までしそうな勢いでイロイロがりがり削れている。うっかり不定の狂気は全滅フラグなので、洒落にならない。
「分かりました!!それって、マルガレーテの王子様が手取り足取りナニ取り、じっくりと好みを教えてくれるってことですよね!!もう、それなら大歓迎です!!今すぐでもオーダーしてください!!」
「つか、ここ、テイスティ・マーモットが出入りしてる場所だからな!!」
ふと、俺は肌色の塵にカース・ガイドをかける。結果は勿論、転送されたものだった。
次にこの空間に対して、カース・ガイドをかける。すると、何故かこの場所が普通の地下洞窟ということが分かった。
いや、待て、ほんとになんでだ。
「マルガレーテ、ここの周辺にモンスターはいそうか?」
急に変わった俺の声音に、それまでシナを作ってイロイロ突込みどころの多いアピールをしていたマルガレーテは、一瞬できびきび辺りを探る。
「そうですね、いません。というか、ここ、トラップもないですし、もしかして普通の洞窟なんですか?」
「ああ、この場所自体に転送された形跡はない。ただし、その塵の方は転送されている」
Mのじいさんと出会った場所とちがい、この広間は俺たちが入ってきた場所以外に出入りできる場所はない。それならば、このポスターやら本やらは迷宮内からこの場所に動かしたモノがいるはずなのだ。劣化もなかったことから、それもつい最近。
「おかしいですねー。おかしいといえば、テイスティ・マーモットの名前もですよね!これ命名した人が知っているんじゃ……」
「ここへのヒントにか?まわりクド過ぎないか?」
俺も考えないでもなかったが、それでは遠まわしすぎるので、あくまでも一案として気にかける程度にしていたのだ。
「そうですね。全然連想できないですもんねー」
んーと、考え出したマルガレーテは何かに気がつくと戦闘態勢に入る。俺も急いで、神経を研ぎ澄ませば、なにかを引きずるような音がした。
音を出さないように伺っていると、物音を立てていた何かが謎の物体を投擲してきた。
戦闘かと思いきや、以降攻撃してくる気配もない。
気をぬかない程度に警戒をとくと、投擲された物体を見て俺もマルガレーテも沈黙する。
「なあ、コレ」
「マルガレーテの王子様!!追跡間に合いますよ!!」
ちょっと過激な巨乳痴女の本だったのだ。気まずいのとイロイロで俺が絶句している間にマルガレーテはターゲットを補足していた。その笑顔がやばかった。
しかし、犯人が分かるのはありがたいので止めない。
「分かった。追跡を頼む」
「はい!!」
俺とマルガレーテはブツを投げ込んだ犯人を追うことにした。




