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その後は、テイスティ・マーモットの幻覚(あられもない格好の巨乳痴女)にマルガレーテが荒ぶるくらいで、つつがなく狩りができた。
動く壁については、慣れれば、音がした後に移動するくらいで回避できるので、途中からは余り気にしなくなっていた。
暫く狩っているうちに、俺は疑問を持ってしまったので、アサシンのくせにテイスティ・マーモットに殴りかかっていたマルガレーテに声をかけてみる。
「マルガレーテ、テイスティ・マーモットの幻覚は全部同じなのか、それとも違うのか?」
火属性でもないくせに、重たいこぶしをお見舞いしていたマルガレーテは手を止めずに、こちらを見て首をかしげる。器用なやつである。土属性なので器用値は高いのだが。
「そうですね、同じのもあれば違うのもあります。大丈夫です!!あたしはこれから育ちますから!!」
「同じときもあるのか」
後半は聞かなかったことにして、辺りを見回す。
「マルガレーテ、そいつを始末したら、周辺に昼間には現れなかった空間がないか調べてくれ」
「はいはいはい!!お安い御用です!!」
光速で仕留めると、晴れやかな笑顔で肉を回収して、離れていた俺の側に戻ってくる。
切り替えも早いマルガレーテはすぐに集中して、周囲を探る。こういうとき、探索スキルがあるのは本当に便利が良い。
「こっちに結構広い空間があるみたいです」
「行ってみるか」
「はい!!でも、急にどうしたんですかー?」
マルガレーテ先導で進む。山盛りのトラップもあるので、探索スキルフル稼働なのだが、雑談する余裕があるあたりはさすがだ。
「いや、テイスティ・マーモットが見せている幻覚に関して思うところがあるんだ」
「マルガレーテの王子様も好きなんですね。もうこれは二人で育てようってことですよね!!あたしとしては大歓迎です!!」
「お前と育てるモノは何もないからな!!そうじゃなくて、お前とじいさんが見た幻覚が同じものっぽいだろ?その後も違う個体が同じ幻覚を見せたり、テイスティ・マーモット側にその痴女の情報源があるんだと思ったんだ」
「そう言えば、そうですね!!」
そうこう話しているうちにマルガレーテが発見した空間に辿りついた。
入って一歩で、思わずマルガレーテの視界をさえぎったのは、あられもない痴女のポスターが貼られていたからだ。これ、アウトだ。
「マルガレーテの王子様ったら、こんなプレイが好きなんですねー!!」
「違う!!」
しかし、これ、確認のためには見てもらわないといけない訳で、しぶしぶ見せる。
「……マルガレーテ、幻覚はこんなヤツだったかって、おい!!」
ポスターやら、床に散乱する子供には見せられない本を視界に入れたマルガレーテは、にっこり笑顔になると、クナイを持ち出した。
「滅べぇえええええ!!」
止める間もなく無数のクナイが飛び交い、紙を切り裂く。ちょっと洒落にならない。ぶっちゃけ、気まずさも吹っ飛ぶ迫力だ。
「おい、落ち着け!!」
「安心してください。あたしは成長途中なので、マルガレーテの王子様の好みに沿うように頑張りますから、何も問題ありません!!」
「いや、問題しかないだろ!!」
紙ふぶきが舞う中、力説するマルガレーテ自体も大分大丈夫ではない。
「塵になれぇえええええ」
本当に微塵になるまで、マルガレーテの攻撃は続いた。




