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「おお、メロディではないか!!」
俺とマルガレーテがMを連れて行くと、じいさんは嬉しそうにそうのたまった。完全にMの身内である。
しかし、それにしても。
「メロディ……」
「そうだよ!!あたいの名前だよ!!似合わない自覚はあるんだ!!」
Mは居た堪れなさそうに叫ぶというか、うなる。声が低いのでいちいち獣じみて聞こえるのだ。
「Mさん、可愛いじゃん!!」
そのうち「うがぁあああ」と咆哮を上げ始めたMに、マルガレーテが必死のフォローをするが駄目だ。多分、こいつ、名前にトラウマがあるんだと思う。
「そうじゃよ。メロディと言う名は将来、むちむちに育つよう願いを込めてだな。むっちむっち巨乳のメロディちゃんなんて最高じゃろ?」
じいさんんも慰めようとして、さり気どころか普通に最低なことを言いやがる。駄目だこのじいさん、身内が回収に来い……目の前で状態異常を起していた。
「まさか、こんなにガチムチに育つとは思わなんだ」
「母さんが二メートルあるんだから、あたいがこうなるのは予想ついただろう!!」
「突然変異の望みがあるじゃろう!!」
突然変異の辺りでほぼ絶望的なんじゃないかとは言わない。Mが哀れすぎる。
「M、名前がメロディだって良いじゃないか。名前なんて飾りだ!!俺なんて誰にも呼ばれないんだぞ!!」
両親にクロ一号だとか呼ばれだした辺りで、自分の名前に自信が持てなくなりそうになっている。最近は「アレ?俺の名前はなんだったか」と思い始めないか、不安になるほどである。
「ケロの字……」
「呼ばない面子にお前もいるからな!!」
「マルガレーテの王子様はマルガレーテの王子様です!!」
マルガレーテについてはスルーだ。しかし、こいつが一番マシな気がする。ここまでくると、俺の名前はタブーかなにかなんじゃと勘繰りたくなる。
「ほう、お若いの、それは大変じゃな。で、なんと名じゃ?」
しれっとじいさんが言ってくるが、現在の惨状の半分はこのじいさんのせいである。因みに残り半分はMをつれてきた俺のせいだ。
「クロード・デュマ……」
「デュマじゃと!!ジョルジェットたんと同じデュマじゃと!!」
俺が言い終わらないうちにじいさんが叫んでくる。この辺り、やっぱりMとじいさんに血縁関係があるんだなと納得できた。
「なんだい?ケロの字のおばあさんと知り合いなのかい?」
「ぅおおおおおおおお!!ジョルジェットたんの孫じゃと!!こんなところで出くわすとは、ワシとジョルジェットたんは運命で結ばれておるんじゃぁああああ」
Mが正気に戻ったら今度はじいさんが荒ぶりだした。もう、フロアサール家の家系にはセルフ状態異常の遺伝子が組み込まれているんじゃないかと思う。
「M、このじいさんギルドに差し出していいか?」
「別に構わないよ!!」
じいさんの処遇を決めたところで、俺とマルガレーテは見張りをMに任せて、今度こそテイスティ・マーモット狩りを始めた。




