表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
闇属性僧侶のあんまり平穏じゃない日常  作者: 水可木
一章、迷宮とトラブルメーカー
7/130

7

 宿屋に戻ると、アリスの母親のマーガレットさんがとても良い笑顔でエントランスの中央に立っていた。

 その右手の大斧については見なかったことにしたい。

「おかえりなさい。グラディウス君」

「クロードです」

 俺は一応お辞儀をして、酒場へ向かう。と、アリスもこちらに来ようとした時、マーガレットさんが、どすっと、大斧ので床を突いた。

 俺どころか、シャルロッテもびくっとした。飛びついてきて、俺の腰にしがみついているマルガレーテはスルーする。

「アリスちゃあん?」

「あははは、ただいま!」

「お母さんは宿屋の女将おかみで、ウッドマンじゃないの。お父さんも酒場のマスターで、カーペンターじゃないの」

 笑顔で淡々と言うマーガレットさんが怖い。

 と言うか、朝食のとき、イスとテーブルが揃っていたのは、マーガレットさんが切り出した木を、夫の

ロレンスさんが加工して作っていたからのようだ。破壊癖のある娘を持って苦労して大変そうだ。

「あんまりにも、反省しないようだから、お金を払うまで、アリスちゃんは酒場に立ち入り禁止にすることにしたの」

「え?!昼ごはんは?!」

「当然、ナシよ」

 親子団欒を邪魔するのもアレなので、俺とシャルロッテとマルガレーテはさっさと酒場の席を確保する。

「昨日着いたんなら、フォレボワ料理は、まだ、あんまし食ってないんだろ?」

「あ、はい。メニューが豊富で、選べなくて、昨夜も今朝もお芋料理を頼んじゃいました」

「マルガレーテの王子様のおススメならばねずみ肉だって食べられます」

 なんかほざいているマルガレーテは安定のスルーに限る。そもそもこいつ、寝ぼけたときの発言からして、鼠を食ってる疑惑が俺の中にある。

「もう、マルガレーテちゃんは雑食なんですから」

「あ、食ってんのな、鼠」

 雑食で済ますシャルロッテも凄いが、食事前にこの話題を続けたくないので流す。

「でも、マルガレーテの王子様。フォレボワでもマーモット料理は食べますよね」

「もの凄く、メジャーな肉だったな。山鼠マーモット

 マーモットだと思えば、いたって普通に思えるのだから不思議だ。

「まあ、昼はフォレボワ家庭料理の代表格ってことで、ポトフをススメておく」

「良いですね。家庭料理」

「これは、あれですよね!あたしに覚えて欲しいってことですよね?家庭料理!!」

 きゃはっと身悶えるマルガレーテなんて俺の視界にはない。自分に言い聞かせながら、ロレンスさんにポトフとライ麦パンを頼む。

「昼から、俺はアリスと迷宮に出かけるが、お前らはどうする?」

「そうですね。ご一緒して良いですか?」

「雑魚狩りで稼ぎが期待できなくても良いならな」

「構いません」

「マルガレーテの王子様、フォレボワの迷宮ってデート・スポットなんですよね?やだ、やっぱり、ビキニアーマーが必要だったんじゃないですかぁ」

 ばしばしテーブルを叩くが、マルガレーテはアリスと違い、火属性を持っていないので壊すことはない。

 運ばれて来たポトフとライ麦パンを腹におさめた後、俺はライ麦パンを追加した。

 別に物足りなかったわけでもないので、手持ちの布巾にくるむと酒場を出る。

 エントランスに戻ると、しくしくと床に転がるアリスがいた。宿屋を訪れる冒険者がドン引きするなか、放置し続けるマーガレットさんはさすがだ。

「おい」

「うう、食う、飲む、打つ、がわたしの楽しみなのに……」

「わりとサイテーなんだが」

 しくしく最低なことを言っている。買わないだけマシなのかもしれないが。

「ほら、これやるから、迷宮行くぞ」

 布巾に包んだライ麦パンをやると、とたんに元気になって跳ね起きる。現金なやつだ。

「クロ助!!」

「金は後で徴収するから、礼はいらん」

「あのアリスさん!これ、どうぞ」

 そのままパンにかじりつこうとしたアリスを止めて、シャルロッテがバターを渡す。ますますアリスの目が輝く。

「じゃあ、あたしはっと」

 マルガレーテはがさごそ、カバンをあさってナニかのし肉を出した。きっと何の肉か聞かないほうが良いだろう。

「うう、ふぃんふぁ、あふぃふぁふぉう」

「食いなが喋んな」

 アリスもなんとか昼飯にありつけた後で、再び俺たちは迷宮へ向かった。

 



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ