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闇属性僧侶のあんまり平穏じゃない日常  作者: 水可木
七章 迷宮と問題の山
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「ああ、駄目!!その剣、凄いんだよ?!」

 アリスが買った要らないモノたちを売り払って、少しでも金の回収をしようとしていた俺は、宿屋出口にてアリスに後ろから羽交い絞めにされていた。

「放せ、どう考えても要らないだろうが?!」

「わたしソードマンだもん。剣が要るよ?!」

「普通の剣ならな!!」

 アリスが買ってきた剣は、攻撃力マイナスのとんでもない品だった。更に、敵味方関係なく被弾するかもしれないという命中補正がかかっていた。そんな補正はないほうがマシである。

「だって、味方に命中したら即死発動って、凄いよ!」

「凄いのは、それをPTに入っているのにもかかわらず、使用しようと思う、お前の思考回路の混迷具合だ!!」

 なお、この剣は安定のマリアさん作品だった。

 ナニ輸出してんだアノ人。

「大丈夫だよ?」

「大丈夫じゃない。問題だ!!」

 俺とアリスが戸口でグダグダしていると、マルガレーテが他のガラクタと言う名の武器を持ってやってきた。

「見たところ、この辺りはマイナス補正が酷くて、収集品ってトコですよー」

「ああ、それも売るから、そこ置いててくれ」

「はーい。それから、あたしも後で抱き合いたいです!!」

 おい、お前にとっての抱擁は羽交い絞めなのかと突っ込みたいが、スルーだ。落ち着け、俺。

「クラウディオさん、このマントも微妙なんですが、予備を考慮するのならば、残してもいいのではないかと」

 更にシャルロッテがナスターシヤを引き連れて、微妙な防具を持ってくる。

「あ、ケロの字、防具売ってきたから、コレ売り上げだよ」

 防具を売ってきたMも帰ってきて、カオスは加速する。

「だああ、これ売ったらその足で迷宮行くぞ」

「いやぁああ、絶対使うって!!」

「絶対に自爆するだろうが!!M、こいつ引き剥がしてくれ!!」

 さっさと迷宮へ行きたいのでMに頼めば、べりっとアリスを剥がしてくれる。俺では火属性のアリスには力で勝てなかったというのに、いとも簡単にやってくれた。

「一回迷宮から帰ったら、武具屋で使える剣を探しに行くぞ」

「うう、賭けに負けたと思って手放すことにするよぉ」

 アリスは言うと、おとなしくなる。こいつの中での優先順位が不安になる発言ではあったが、気にしては駄目だ。

 要らないモノを売って、ヴェントの迷宮に向かったわけだが、入って一歩で回れ右をしたくなった。

「……プリちゃん」

 まさかのプリちゃん人形が入り口から一歩の場所で、うなだれていたのだ。藁人形のクセに感情表現が豊かなヤツである。

「あ、これがクロ助が言ってたサンドバックだね!!」

「これをれば良いんだね!!」

 アリスが反応すると、ボキボキ指を鳴らしながらMが続く。

「……タコ殴り」

 ナスターシヤが物騒だ。その手にはランタンがあるのだが、投げないように見ておく必要があるだろう。

 現在、ランタンはシャルロッテとナスターシヤが持っていた。もう一つは予備としてシャルロッテの道具袋に入っている。

「それじゃあ、あたしはトラップ解除要員として準備しておきますね!!」

「ああ、頼んだ」

 言うや否や、アリスとMがプリちゃん人形に斬りかかる。正確には、Mは殴りかかっていた。

 火属性二名による集中砲火にプリちゃん人形はふるふる震える。

「なあ、アレ喜んでないか?」

「……似すぎた」

「なんて言うか、全体的にキモイですねー」

「スキル攻撃やってみましょうか?」

 訊ねながら、シャルロッテは属性攻撃をしかける。しかし、それにもプリちゃん人形はぶるぶる震えるだけである。それも歓喜にだ。

 気持ち悪いなんてものではない。

「って、あいつらの攻撃が平気って耐久おかしくないか?!」

「ちょっと調べたんですけど、攻撃無効みたいです」

 マルガレーテがさらっととんでもないことをのたまった。

「アレですよー。フォレボワの一方通行区画の壁と一緒です」

 まさかの事実だ。

「おい、アリス、M、その人形が満足した辺りで奥に行くぞ」

 今はどうしようもないので、後回しにすることにした。

 

 

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