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俺を他所に焼肉大会は大盛り上がりだった。
どうでもよくはないが、肉の出所を考えれば、こんなことをしている場合ではない。常識が来い。
まさかの「あーん」攻撃に撃沈した俺は、早々に宿屋に戻っていた。当然とばかりとシャルロッテ、マルガレーテ、ナスターシヤがついてきたのだが、俺が無駄に疲れているのは、だいたいこいつらのせいである。
テーブルに突っ伏していると、キッチンで紅茶を淹れていたシャルロッテが戻ってきた。
「ダージリンのミルクティーです」
一口飲めば、程よい甘さだった。
「そう言えば、クラウディオさん、モンスターの湧くペースがどうたら仰っていたそうですね」
自分もミルクティーを飲みながらシャルロッテが言った。アリスがちゃんと伝言してくれたんだろう。
「一応、報告書作って、パクったフォレボワ・ギルドの伝書鳩に持たせましたよー」
マルガレーテがとんでもないことを言うので、思わず紅茶を吹きかけた。飲食中の衝撃発言は駄目絶対である。
「おい」
「ギルドが閉まってますし、鳩は外に居ましたし、緊急事態でしたので、大丈夫でしょう」
さらっと、共犯であろうシャルロッテが擁護する。実は結構、豪快な少女だ。
「もう、それでいい。で、お前らの体感的には、モンスターが湧く早さはどんな感じなんだ?」
大抵のことはスルーし慣れている俺は、さっさと切り替える。
「そうですね、そもそも、同じ迷宮内も最初の層と奥ではペースが違いすぎるので、あまりピンときません。でも、早くなっていっている、というのは、なんとなく分かる気がします」
「そっちもあったな」
あのスキル無効区画にいた蝙蝠系のモンスターも、もともとは有効区画にいたものが溢れて、押し出された結果だろう。十年であの量なら、湧く早さは中ボス並みくらいか。
「ちゃんとした計測が必要そうなので、各迷宮での調査を依頼しておきました」
さすが研究タイプだ。
「調査待ちで、ギルド待ちですし、あたしたちも冬至の祭りで熱い夜を目指しましょう」
綺麗にまとまりそうなところで、マルガレーテが爆弾を投げかけてきた。油断していた俺は見事に被弾して、再びテーブルに突っ伏す。
「夜間は外出禁止だ!!」
「クラウディオさん、安心してください。ナスターシヤちゃんは私が責任を持ってみています」
シャルロッテも親指を立ててるんじゃない。安心できる要素がどこにあるんだ。
「そんなに外出したいなら、郊外の見張りをするか?」
俺が片っ端から片付けたので、しばらくは大丈夫だろうが、モンスターが溢れていないか見張るのも良いかもしれない。
「もう、分かっているクセに、わざとイジワルなんですからー。良いですよ。Mさんとアリスさんにも声をかけときますね」
いやんとくねくねしながらも、意外と常識があるマルガレーテは了承した。なんだかんだはっちゃけつつも、町の住人の危機感のなさに危機感を覚えていたのだろう。
「分かりました、私はナスターシヤちゃんと皆さんの夜食を用意しておきますね」
こうして、夜間の見張りが決まった。




