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闇属性僧侶のあんまり平穏じゃない日常  作者: 水可木
六章 迷宮と冬至の祭
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 ヴェントの迷宮は畑のど真ん中にあった。

 少し離れた場所にはポプラ並木だとか野原だとかあるのだが、狙ったかのようなピンポイントで畑の真ん中だ。持ち主が哀れでならない。

 そして、フォレボワとは違い、地下迷宮であるらしい。

 入り口の塹壕のような盛り上がりを前に、悟る。

「ここが、ヴェントの迷宮か」

 一応、入り口にはギルドが張った結界というかトラップによって、侵入を防いでいる。

 無許可とは言え、もともと俺はヴェントの迷宮に入る資格がある上に、ナスターシヤもそもそもヴェントの迷宮内にいたため、すんなりと入ることができた。

 中は岩肌と鍾乳洞の一般的な洞窟だった。トラップさえなければ、童心がくすぐられるような場所である。

 こつんこつんと慎重に進めば、最初の広間に出た。

 そこには、ラピッド・ボアがひしめき合って、ある意味壮観だった。

「……おかしい。こんなに集まらない」

 どこからっていこうかと思案していると、ナスターシヤがポツリと呟く。

「集まる原因があるってことか」

 しかし、それもこの群の向こう側なので、どのみち通り道確保に仕留める必要がある。

「……ナスターシヤ、大丈夫」

 攻撃を開始しようとしたとき、ナスターシヤがそう言って、ラピッド・ボアの群に入っていく。

 あわてた俺だが、不思議とラピッド・ボアがナスターシヤを襲うことはない。

 あれか。プリヘーリヤが言っていたナスターシヤはモンスター的な存在とかいう奴は。

 ふと、俺は気がつく。ナスターシヤが襲われないのはモンスター扱いだとするならば、反対にナスターシヤがモンスターを襲うのも無理なのではないかと。

 そうこう考えているうちに、ナスターシヤと距離があいてしまう。

 俺も行きたいのは山々なのだが、おそらくナスターシヤに任せたほうが良いだろう。いざというときに動けるようにするが、余計なことは控える。

 反対側にたどり着いた、ナスターシヤは俺の方を向くと、こくんと頷いててててと、通路の向こうに消える。どうやら、心当たりがあるらしい。

 臨戦態勢で待つこと数分、ラピッド・ボアに動きがあった。

 ブキブキなきながら、どどどどっと押し寄せてきたのである。気合のドレインで乗り切ると、屍の山の向こう側から、ナスターシヤと人影が現れた。

 それは、多分、俺と同じくらいの大きさはある藁人形だった。

「……これ、アイテム化した」

 そう言って、ナスターシヤが広間の端を指差すと、藁人形から謎の光線が出て、湧いたばかりのラピッド・ボアを消した。

「いや、え?アイテム化?って、は?」

 あまりのことに頭がフリーズするのは当然の反応だろう。

「……ナスターシヤ、寂しいから、これプリちゃん人形」

「プリちゃん……って、プリヘーリヤのことだよな?」

 ナスターシヤはこくんと頷く。

 改めて藁人形ことプリちゃん人形を見ると、殴りやすそうな形状で、腹部の藁が痛んでいた。どうやら、ナスターシヤの寂しさとストレスを解消してきたらしい。

「……転送の影響、ナスターシヤ、襲われなくなったら、動き出した」

「移動型のトラップ化しているのか」

 トラップならば、無差別に発動しているのも理解できる。そして、迷宮に紐付けされているのならば持ち出しは不可といったところか。

「……ナスターシヤいなくて、暴走していた。ベース、悪かった」

「あの光線的な何かはその人形的には涙なのか?」

 本人を知っているだけに、なんともいえない気になる。

 どうやら、ラピッド・ボアが溢れた一因はこの暴走人形にあるらしい。変な光線で追いたてられたラピッド・ボアが行き場をなくして、外に出るとか、本当に迷惑極まりない。

 しかし、出現間隔が短いのも事実で、さっき消えたばかりの場所にはもう数匹のラピッド・ボアが歩いている。

 体感で分かるくらいに早いので、相当だろう。

「とりあえず、この周辺を一掃して帰るか」

「……プリちゃん、破壊も」

 後回しに考えようと思っていたことを、ナスターシヤが凄い解決方で言ってきた。

 どうしよう、この子、結構過激かもしれない。

 俺は色々考えたくなくて、ドレイン連発の清掃活動を開始した。

 

 

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