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闇属性僧侶のあんまり平穏じゃない日常  作者: 水可木
一章、迷宮とトラブルメーカー
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5

 フォレボワの町まで戻ってきたのは良いが、予定外の出来事が多すぎて、アリスの所持金は目標金額に達していない。

 昼飯まで時間はあるが、迷宮に行って帰るとなると、昼飯が遅くなってしまう。

 休息を取って、午後から迷宮にもぐるのが賢明だろう。

「マルガレーテの王子様、ささ、教会に行きましょう!!」

「クロ助ぇ、昼ごはん代貸して!」

「クラウディオさんはお芋、お好きですか?その、私、ネーベル地方の郷土料理が得意なんです!」

「……お前ら、本当に自由だな」

 腕に絡みつくマルガレーテが邪魔だし、アリスは金をたかってくるし、シャルロッテはまあお礼がしたいとのことなので良い。

 頭痛がしてくるが、気にしないことにして、町の中央にある市場へと向かう。

デス・スコーピオンを剥ぎ取ったからはアーマーなどの材料になるのだが、需要を供給が上回っているため、たいした金額にならない。それこそシャドウ・ヴァイパーの鱗の方が高額取引されているくらいだ。

「クロ助、これじゃ、ライ麦パンすら買えないよ」

「買うな!!」

「アリスさん、お昼ご飯は私に任せてください」

「シャルロッテ!アリスは甘やかすと、とんでもないことになるぞ?!」

「すみません!ウエディング・ドレスってどこで買えますかー?」

「…………」

 店員に何か聞いているマルガレーテはスルーする。俺の精神衛生的に触れたくないのだ。しかし、思い出してしまった。

「と言うか、マルガレーテはギルド寄って金おろして来い」

 このアサシン少女は無一文で迷宮に居たのだ。そういうわけで、俺は蘇生の礼金を貰っていなかった。ぶっちゃけマルガレーテからは何も貰いたくないが。

「そうですね。私も闇耐性装備をそろえないと、厳しそうです」

 シャルロッテも行くと言うので、市場で一通り換金したあと、西市場の南にあるギルドへと向かった。


「おう、良いタイミングで来たナ」

 俺たちがギルドに入ると受付嬢が声をかけてきた。既に三十路越えだとか、二メートルを越える巨体だとか、筋骨隆々《きんこつりゅうりゅう》の上に野太い声で性別すら危うそうだとか突っ込んではいけない。彼女はまぎれもなくフォレボワ・ギルドの受付嬢なのだ。尚、純火属性の彼女の攻撃力は色々思考を停止するレベルだったりするが、突っ込まない。

「何がですか?」

 嫌な予感しかしないので、俺がおそるおそる尋ねると、受付嬢はギルドのすみっこを、ふとましい指で示した。

 そこには少し前に迷宮入り口に転がしておいた男どもが積まれていた。どうやら、親切なだれかに持って帰ってもらえたらしい。

「そいつラ、さっさと解呪してやレ」

 そういえば、遠慮なくサイレンスとシャドウ・バインドをかけたのだった。熟練度的にこれを解除できる人間は限られるし、俺が解くのが一番手っ取り早い。

 しかたなく解除しようとした俺をシャルロッテが止める。

「あの、その人たちの解除待ってもらえますか?と言うか、郵送して良いですか?」

「そういや、知り合いなんじゃ?」

「いえ、迷宮の入り口で会ったんですけど……」

「ああ、思い出した!そいつら、あれだ?大声で雑魚敵集めた奴らだ!」

「マルガレーテちゃん、そうです!その人たちです」

「シャルロッテがアクア・ベール使わなかったら、あたしたちも巻き添え食ったよね」

 アクア・ベールは水属性のスキルで視覚情報をかく乱させる技だ。割と上位スキルなのでシャルロッテは見かけによらずそこそこのウィザードなのだろう。

 そのシャルロッテが瀕死になったのだから、男たちが集めた雑魚の数は、俺とアリスが捌いたときよりもずっと多かったのだろう。

「有害指定で良いな」

「さすがに、これは、擁護できないよ」

 俺とアリスも呆れるしかない。

「なるほど、おK把握しタ。他の冒険者の害になるのならバ、仕方なイ。次の便で本部ニ送っておク」

 受付嬢は容赦なく言い放つと、カウンターから出て、男たちを担ぎ上げる。大柄な男三人を軽々担ぐ受付嬢はさすが純火属性ということにしておく。俺も命が惜しい。

「じゃあ、次は武具屋か」

 シャルロッテとマルガレーテが金をおろしたのを確認すると、東市場の最東にある武具屋へと向かった。

 





 

 


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