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闇属性僧侶のあんまり平穏じゃない日常  作者: 水可木
六章 迷宮と冬至の祭
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 ヴェントへは受付嬢が手配してくれた馬車で向かった。

 見送りに来たウィンザー夫妻の晴れ晴れとした笑顔が印象的だった。

 PTメンバー中過半数が旅慣れていると、問題らしい問題もなく、ヴェントに辿りついた。

 ヴェントもフォレボワ同様にもともと田舎の農村である。のどかな田園風景がと形容したいところだが、刈入れが終わって、殺風景な景色が広がっていた。来る時期を間違えた感が半端ない殺伐さである。

 観光で来た訳ではないのでマシだけれども。

「ヴェントの宿屋は入り口の一軒屋だぞぉ」

 ふあああと御者ぎょしゃ欠伸あくびをしながら言った通り、ヴェントの宿屋は入り口付近にあった。

 ぱっと見は普通の農家のような建物の戸に“宿屋”と書いた板が打ち付けてあった。

「これが、宿屋……」

「普通の家みたいだね!!」

 俺の呟きを聞き取ったアリスが明るく言う。

「もしかしたら、外壁を変えずに中だけを改装したのかもしれません」

 シャルロッテがフォローしだすくらいに、普通の農家だ。

「あ、牛が繋がれているじゃないかい」

 Mが宿屋脇に繋がれた牛を発見してくれたおかげで、ますます農家度が上がる。

「……中、普通のおうち」

 唯一ここに来たことがあるナスターシヤの一言で、中身も普通の農家だと確信できてしまった。

「ごめんくださーい」

 俺たちがあまりの普通の家さに立ち止まっていると、マルガレーテが中に入っていく。まあ、宿屋だと書いてあるし大丈夫だろうと俺たちも中に入る。

 玄関には麦の束と玉葱が吊るされていた。その脇に木製の脱穀機と糸車が置いてあった。土間の隅には機織機と、どう贔屓目に見ても普通の家である。

「マルガレーテの王子様、これ、どうしましょう?」

「どうにもならないな」

 中を見渡しても、人が出てくる気配はない。

 何か書かれていないか探すも、ますます一般家庭なのが知れるだけに終わる。

「……おばあちゃん、耳遠い」

 ナスターシヤは言うと、とことこどこかへ歩いていく。何気にしっかりした子なので任せても大丈夫だろう。

「とりあえず、宿屋に荷物を置いたら、ギルドだな」

「フォレボワの受付嬢さんが、大抵のことを連絡してくださったので、時間は掛からないと思いますが、全員で行きますか?」

 シャルロッテが訊いてくる。

「まあ、目を離したくないのがいるし、時間が掛からないなら、全員で行こう」

「もう、マルガレーテの王子様ってば、ひと時も離れたくないだなんて熱烈なんですからー」

「そうなのかい?ケロの字、そのなんだ……」

 前言撤回、こいつらにサイレンスとシャドウ・バインドかけて置いていくべきだ。

「そういえば、ヴェントはパスタが美味しいらしいよ!!」

 きらきらとアリスの目が輝いているが、お前、なんのためにここに来たと思っているんだ。

「おやおや、コルンバーノ、大きくなったねぇ」

 ナスターシヤとともにやってきた老婆は俺を見ると、開口一番そういった。これ、完全に孫かなにかと勘違いしているだろう。

「ええっと、部屋を借りたいのですが」

「あれあれ、他人行儀だねぇ。さびしいねぇ」

 しょんぼりする老婆に良心が痛む。だが、他人である。

「あ、表札にデュマってあるよ!!クロ助のあばあちゃんなんじゃないの?」

 宿屋の板をはぐっていたアリスが爆弾発言をかます。なんで、俺の祖母がヴェントで宿屋やってるんだ。と言うか、俺の両親が引越ししていたりで、フォレボワ以外に親戚がいるフラグが立っていたけれども。色々納得がいかない。

「どうしたんだい?コルンバーノ」

「あの、俺、クロードです」

「はあ、そうなのかい。コルンバーノ」

「…………」

 この脱力感はきっと慣れない旅の疲れに違いない。

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