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闇属性僧侶のあんまり平穏じゃない日常  作者: 水可木
五章 迷宮と若き研究者
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「ああ、みなさん、二度と会えないかと思ってました」

 小部屋にたどり着くと、半泣きのプリヘーリヤが出迎えてくれた。

 ナスターシヤの兄貴であることを考慮しても、割と本気で二度と会いたくない。

「疑問点がいくつかあるんでな」

 俺とシャルロッテが質問を開始する。

 アリス、マルガレーテ、M、ナスターシヤはポーカーで時間つぶしをするようだ。お前らナスターシヤに何教えてやがる。

「ウダール・モールニはフォレボワから馬車で二月くらいです。早馬乗り継ぎの休憩なしで飛ばせば五日くらいで行けますよ」

「「……」」

 プリヘーリヤの返答にPTメンバーへの突っ込みは吹っ飛んだ。

「遠すぎないか?」

「この近辺のエネルギーは全部他の迷宮に使われましたからね」

 酔っ払いのテンションが怖い。その場の勢いでどれだけ影響を与えたんだ、あの人ら。

「で、ウダール・モールニの迷宮のモンスターは生息できそうなのか?」

「それなんですが」

 プリヘーリヤはこてんと首をかしげる。その動作は少女や幼い子供がやるから可愛いのであって、青年がやっても鳥肌が立つくらい気持ち悪いだけである。シャルロッテは思わずといった様子で、マルガレーテのように俺の腕にしがみつく。

「オレ、迷宮が出現して、わりと早い段階でフォレボワに行ったんで分からないんですよね」

 あははははと笑ってるが、笑い事ではない。

 こいつ、役に立つように見えて、肝心なところで普通に役立たずだ。

「文字が違うみたいだが、一番近い他の町や村までどれくらいなんだ?」

「ああ、一番近かったのがフォレボワですよ。次が僅差でヴェントです」

「「……」」

 どうするんだコレ。

「あの、死峰しほう山脈越えたりします?」

 シャルロッテが恐る恐る訊ねる。死峰山脈はフォレボワやヴェントの北に広がる凍土に覆われた山だ。生物が存在できないので、近づくものはまずいない。

「死峰?って、デス・ロードのことですか?」

「デス・ロードですか?」

「ああ、道が険しいのでよく行商の馬車が落ちるんですよ。オレもカーブで落ちそうになりましたし」

「おい、本当にどうするんだよ?!」

 懐かしいですねぇとのんきにプリヘーリヤがのたまうが、こっちはそれどころではない。

「プリヘーリヤ、ウダール・モールニの文字は古語ですら残ってない」

「みたいですね」

 こいつわかっているんだろうか。

「こちら側以外にも人が住んでる場所があったのか?」

 形跡がない以上、人が住めなくなった村を出た人々は、こちらではないどこかに逃げたのか、そのまま全滅したかのどちらか、それとも……。

「フォレボワやヴェント方面以外はもともと人が住める場所じゃ……」

 答えているうちにプリヘーリヤが気付く。

「え、逃げてきてない?」

「対抗手段の純属性がいたなら、迷宮に逃げたかだな」

 顔色の悪くなったプリヘーリヤに考え付いたことを言ってみる。

 とりあえず、ヴェントの迷宮にいたナスターシヤが無事にここにいる。もし、ウダール・モールニ村の住人が迷宮に避難した場合、対抗手段があれば無事の可能性が高い。

「でも、迷宮が今のウダール・モールニ村付近に出現して大丈夫なんでしょうか?」

「ウダール・モールニの迷宮は火山を取り込んだ迷宮でしたから、迷宮内ならば人間でも生きていけると思います」

 シャルロッテが首を傾げるとプリヘーリヤが答える。

「ヴェントの後は、ギルドに申請出してウダール・モールニに行くか」

 俺が溜め息交じりに言うと、シャルロッテとプリヘーリヤの目が輝く。シャルロッテは可愛いが、プリヘーリヤは悪寒が走るくらいにきもい。

「クロロシスさん!!」

「だから、俺はクロードだ!!」

 俺の訂正がわりとむなしく響いた。



  

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