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案の定、アリスとMはエントランスに放置されていた。
『粗大ごみ』とマーガレットさんの筆跡で書かれた紙がアリスに貼られていたが、スルーする。マーガレットさんもストレスが溜まっているんだろう。
「ったく。お前らがマリアさんから余計なものを買わないなら、こんなマネをしなくても済むんだがな」
ほれっと、二人を解呪した。同じタイミングと動作で起き上がってくる。
「ううううう、クロ助の愛が痛い」
「なんだい。照れ隠しだったのかい?!」
「シャルロッテ、こいつら置いて、部屋に戻るぞ」
シャルロッテを伴って、さっさと立ち去ると、アリスとMが慌しくこちらにかけてくる音がした。
俺の部屋に戻ると、買出しを終えたマルガレーテとナスターシヤが思い思いにくつろいでいた。俺のベットの上なのはこの際、気にしないことにする。
「帰ったぞ」
「おかえりなさい!!あたしにします?あたしにします?それとも、あたしにします?」
「いい子にしてたか?ナスターシヤ?」
「……うん」
飛び掛ってきたマルガレーテをかわして入ると、ナスターシヤの側に腰掛ける。
見ると、俺の布団の上にマルガレーテの筆跡と思われるメモ書きが散乱していた。
「ああ、それですか?せっかくなんで、ナスターシヤちゃんに手伝ってもらって、ウダール・モールニについて書かれてないか調べてたんです」
ほらっと、両親から渡された攻略本を見せてきた。なるほど、あの時代に生きていたナスターシヤはある程度読むことができるだろう。
「気がきくな」
「愛妻として当然じゃないですかー。ご褒美に、夜とか夜とか夜とか、愛がってくださいね!!」
「で、シャルロッテ、このメモ書きを見て、なんか分かったか?」
「もう、じらし上手なんですからー!!それなんですけど、あんまり分かったことってないんですよね!」
「とりあえず、マルガレーテちゃんもナスターシヤちゃんも、昔のフォレボワの皆さんも、あの変た……プリヘーリヤさんをド変態だと思っていることは分かりました」
マルガレーテのメモ書きには数えたくなるくらいに「変態」の文字が出現していた。プリヘーリヤのせいで、ウダール・モールニ村が変態の巣窟に見られなかったか不安になる。
「てか、コレ、純属性なら攻略可能を知らせたのは、プリヘーリヤなのか」
「と、言いますか、何気に迷宮転送にも絡んでるみたいですよ、あの人。研究者として、優秀と言うか、やっぱり変態だったみたいです」
マルガレーテは、ほらっと『プリヘーリヤによる情報』と書かれている箇所を示す。
「ナスターシヤちゃんに聞いて分かったんですけど、ウダール・モールニは文字体系が違うみたいなんですжだとかфだとか古語でも見たことありません」
見せてくれたメモ書には見たこともない記号が書かれていた。
「考えたくないんだが、文字が独立してるって、ウダール・モールニはどれだけ辺鄙なとこにあるんだよ?!」
「現在は人が住めない環境のようですが、そこまで環境が変わってしまった場所だと、生息していた生物をベースにしているモンスターたちは生きていけるものですかね?」
シャルロッテの呟きに沈黙が降りる。
「ヴェントに行く前に、もう一度プリヘーリヤのところに行くぞ」
「そうですね。すぐに疑問点をまとめましょう」
もともと、ナスターシヤがいるので出発前には立ち寄る予定ではあった。
ナスターシヤの知識も借りて疑問点をまとめると、その日のうちに迷宮に向かった。




