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「分かっタ。把握しタ」
ギルドで受付嬢に報告をした。
受付嬢は俺とシャルロッテの話を聞きながら、てきぱきと報告書を作成する。純火でマッスルにもかかわらず、インテリなのはギャップ狙いなのだろうか。こちらの火属性の脳筋二名は弟子入りでもして欲しいところだ。
「そうダ」
一通り話し終えたところで受付嬢が封書を取り出す。
「ヴェントへの推薦状ダ。これがあれバ、ヴェントの迷宮ニ、入ることガできル。お前以外ノ申請にハ時間がかかるカラ、使エ」
俺に渡しながら受付嬢が言う。
「ありがたいですが、良いんですか?俺たちがマッピングたとは言え、プリヘーリヤのところまで行ける奴は限られますよね?」
プリヘーリヤが動かない以上、情報を求めるならば、こちらから出向くしかないのだが、今まで踏破した奴がいない最奥にいるのである。あそこまで潜れるのはフォレボワとは言え、そうそういない。
「そっちハ、マリアに頼んでアル。アレの道具ならバ、大丈夫だろウ。多分、キット」
「大丈夫な言い方じゃないですよね?!俺たちが帰ってきたら、迷宮消し飛んだとかやめてくださいよ?!迷宮に流しているエネルギーがこっちにきたら、やばいっぽいんで!!」
人選ミスと言いたいところだが、フォレボワで道具類を作っているのはマリアさんだけなのである。ギルドは速やかに、公認の武具屋か道具屋を派遣すべきだ。
「安心してくれ、クロ一号」
「あらあら、クロ初号機ちゃんってば、あせりすぎよ?」
背後から能天気な声がきこえた。これをスルーして帰りたい。
「ああ、デュマサン」
ぺこりと受付嬢が頭を下げる。
「話は聞かせてもらった。仕掛け男の場所に行く際は我々夫婦が同行しよう」
「だから安心しても良いのよ」
「いや?!思いっきり不安要素しかねぇよ?!」
「次に会うときは、孫を抱かせてくれよ」
ははははと、両親が立ち去る。
本当に何しにきたんだ、あいつら。
「あの、クラウディオさん。頑張りましょう」
こっちを見上げるシャルロッテに「ナニを」と聞く勇気がなかった。
「と言うワケデ、お前ハ気にせズニ、行ってコイ」
「そうですね」
俺は無理矢理納得すると、シャルロッテとギルドを後にする。
フォレボワに戻った時点で、俺たちは三手に分かれた。
俺とシャルロッテはギルドへの報告を担当し、マルガレーテとナスターシヤが買出しを担当し、アリスとMは宿屋で待機してもらった。もちろん、アリスもMも買出しに行きたがったが、ロクなことにならないのがわかっているので、サイレンスとシャドウ・バインドをかけて放置してきたのである。
フォレボワの入り口で無駄に重い荷物化した二名はマルガレーテとナスターシヤが引きずって運んでくれた。俺の部屋かエントランスにでも転がしてくれているはずである。




