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闇属性僧侶のあんまり平穏じゃない日常  作者: 水可木
五章 迷宮と若き研究者
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 相変わらず、よい子の図説「だいちは うごいて いる」を製作中のプリヘーリヤに完成する様子は見られない。

 頭を抱えてうなっている辺り、完成するのかすらあやうい。

「あのな。根をつめてもドツボにはまるだけだぞ」

 休息を促すと、涙目でこっちを見てくる。ナスターシヤの方がしっかりしているってどうなんだ、この兄貴。

「クロロシスさん、お構いなく。オレ、人間じゃないんで、疲労しないんです」

 おい。どっから出てきたんだ。そのクロロシスとか言う奴。

「って、人間じゃないんだな」

「迷宮の仕掛けなんで生物かも怪しんですけどね」

「おにいちゃん、もともと、人間としても駄目な部類」

 おいいい。ナスターシヤがとんでもない発言をかましてくれた。目の前で妹に罵られたプリヘーリヤはどこか恍惚とした表情でがっくり這い蹲る。ああ、コレ人間としても駄目なやつだ。

「ほら、仕掛けとしてはしゃべれますし、結構イイとこいってると思うんですよね」

「お前は誰というか何と競ってんだよ?!」

「いえ、ほら、やっぱり難易度ある迷宮の仕掛けとしては、その辺が気になるわけでして」

「おにいちゃん、無駄口それくらい。さっさと仕上げて」

 本当に容赦がない。

 プリヘーリヤはナスターシヤに言われて、泣く泣く続きを開始する。まあ、本人が休養を必要としていないのならば、無理にさせることもない。

「マルガレーテの王子様、コレ説明が終わったあと、ナスターシヤちゃんはどうするんですかね?」

「……もちろん、帰る」

 マルガレーテの言葉が聞こえていたのだろう。ナスターシヤは俺のローブを引っ張りながら言った。

 じぃっと俺を見上げる瞳に迷いなどない。その潔さに兄貴は泣き崩れているが、触れないのがやさしさというものだ。

「いいのか?」

「……うん。どうせ、おにいちゃん、住む世界が違う」

 これ、あの馬鹿兄貴をぼこっても許される気がするんだが。

 ふと、プリヘーリヤの方を見ると、道具袋(冷凍ダズル・キャンサーでぎゅうぎゅう)で殴りかかるシャルロッテがいた。おい、キャラどこに忘れて来た。

「シャルロッテ、待て、その道具袋はやばい!!」

「軽率なのが許せないんです!!」

 そう言えば、シャルロッテは迷宮入り口の馬鹿三人組に容赦なかったな。

「とりあえず、説明が終わるまで待て」

「はい」

 しぶしぶシャルロッテはうなずくと、プリヘーリヤを一瞥する。おい、プリヘーリヤ、お前なんで喜ぶんだ。今のどこに喜ぶ要素があった。

「あ、そんな、ご褒美……」

「「「「……………」」」」

「ははは、どうした、四人とも」

「あらあら、クロ初号機ちゃんたち、みんなで固まって何?何?母さんも混ぜてちょうだい」

 ぞぞぞぞと鳥肌が立って立ち尽くす俺、マルガレーテ、ナスターシヤ、シャルロッテに、父さんたちは

能天気に声をかける。場違いな能天気さが、時として救いになるのだと知ってしまった。

「シャルロッテ、絶対に殴るな。寧ろ近づくな!!」

「はい。ええ、もちろんです」

 今度は力強くうなずくシャルロッテだが、これ絶対にトラウマになっているだろう。

 

 


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