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ナスターシヤの兄貴ことプリヘーリヤから話を聞いたワケだが、荒唐無稽すぎて信じられないというのが本音だ。
俺たちは現在、プリヘーリヤの要望どおりに、キャンプをしながら説明を待っている。やることと言えば、この部屋周辺のモンスター調査くらいで、後は気ままに過ごしていた。俺以外が。
べったりくっつくマルガレーテの通常運転には慣れてきていたのだ。そこに、俺の両親が燃料のガソリンを注いでくれるので、くっつくというか、絡みつく勢いになり、辟易している。火属性でもないのに、身動きできないとか、どんだけからんでいるんだ。
アリスとMの脳筋コンビはこの部屋を広げてプリヘーリヤをどうにかしようとしているようだが、びくともしないのはマルガレーテが実証済みである。
シャルロッテとナスターシヤはプリヘーリヤの書き物を見物しては、こっちに報告に来る。シャルロッテはお前の友人をどうにかして欲しい。
「ところで、あのナスターシヤの兄貴、どう思う?」
シャルロッテがこっちに報告に来た際に、考察を聞こうと話しかけた。
「マルガレーテの王子様の方がカッコイイに決まっているじゃないですか。もう、あたしの愛は永遠です!!」
「そんなこと全く聞いてない!!」
「そうですね。迷宮と同化なんて、何を考えていたんでしょう?ナスターシヤちゃんを置いて行って」
にっこりと微笑むシャルロッテが黒い。お前、闇属性じゃなかっただろうと思うくらいにおどろおどろしい何かを纏っている。
「当時のフォレボワの連中との関係もだよな。普通、ぽっと出の余所者に重大なことを任せられるものなのか?切羽詰っていたって言えばそうなんだろうが」
本人はいたって泣き虫の雑魚オーラーを醸しているのだが、状況が奇異すぎた。
「ナスターシヤちゃんもどこまで気がついてヴェントにもぐりこんだかですよね」
「当時はもっと小さかったんだろうしな」
兄貴の図に容赦の無いつっこみを入れるナスターシヤを三人で眺めながら言う。誰からとも無く溜め息が出てくる。
「クロ一号、元気がないぞ!!」
「そうよ?クロ初号機ちゃん。あなたはあんなに泣くのがお仕事だったじゃないの!!」
「あんたらが置き忘れたとき、俺、生後何ヶ月だったんだよ?!」
まじめに考察をしたかったのに、駄目両親どもが中断させる。そもそも、マルガレーテをべったりくっつけておいて、まじめもなにもないと思うのだが、俺的にマルガレーテは腕装備の何かだ。
「それでは、また後ほど」
あ、シャルロッテが逃げやがった。まあ、この両親なら逃げたくなると言うものだ。
「なんで、こいつらが親なんだろう」
嘆きの溜め息が出るのは仕方がない。
「おお、クロ一号、溜め息は幸せが逃げるぞ」
「そうよ?クロ初号機ちゃん」
「お前らが現れた時点で、俺の幸せは消し炭だ!!」
「マルガレーテの王子様。マルガレーテの王子様のことは、あたしが責任持って幸せにします、肉体的にも精神的にも、肉体的にも!!」
なんで肉体的を二回も言ったのか問いただす勇気が今の俺にはなかった。




