表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
闇属性僧侶のあんまり平穏じゃない日常  作者: 水可木
四章 迷宮と両親の帰還
34/130

34

 結局、その日の両親との再会は茶会に終わってしまった。

 宿屋に戻ったときには、待機組は既に熟睡していたので、俺たちもさっさと寝たのだった。

 翌朝、全員が起きたところで、渡された本を眺めたわけだが。

「見事に古語ですね」

 シャルロッテが言う。

「これもギルドに持って行くんですかー?」

 マルガレーテが本を指差しながら質問してくる。

「そうしたいのは山々だが、あいつらが渡してきた本だからな」

 普通の両親から渡されたのならば、ギルドに持っていけるが、アノ両親である。嫌な予感しかしない。

「でも、読めないことには、どうしようもないですよね?クラウディオさんのご両親はコレが本題だと仰ったのでしょう?」

「ロクでもないことの可能性が高いんだがな」

「なかなか面白い両親だったよね!わたしの親なら死ぬほど嫌だけど」

「そうそう、愉快な両親だったじゃないか。あたいも死ぬほどゴメンだけどさ」

「最後の本音で、フォローになってねえよ!!」

 どいつもこいつも、他人事だと思ってやがる。まあ、実際に他人事なんだが。

「あら、クロ初号機ちゃんは、古語が読めないのねぇ」

「勉強不足はいかんぞ!クロ一号」

 本を全員で囲っていると、いつの間にか、とんでもないのが混ざっていやがった。これ、部屋に通したのはウィンザー夫妻だろう。

「なんで、湧いて来てるんだよ?!」

「イイ朝だな!」

「あなた、初号機だっていってるじゃない。もう、きかない人なんだから」

「たった今、俺だけピンポイントで絶望的な朝になったけどな!それから、きかないのはアンタもだからな!!」

「あら、クロ初号機ちゃん。昔にたいに『まーあー』って言っても良いのよ?」

「それ、俺が何ヶ月のコトだよ?!」

 このヒトたちと会話していると、正気がゴリゴリ削れていく気がする。

「それで、クラウディオさんのご両親は、何しにいらっしゃったのですか?」

 絶妙に空気を読まないシャルロッテが訊ねる。さすが、俺の訂正をスルーして「クラウディオ」と言い続けるだけはある。

「ああ、それな。石版から転写した古語の翻訳の依頼を出していただろう?」

「父さんと母さんが昨日、ぱっぱっと終わらせたから持ってきたの」

「それ、昨夜のうちに渡してくれよ?!と言うか、古語の翻訳依頼出してた時点で、この本が読めないことは分かっていたよな?!」

「まあ、普通に忘れていた」

「あらあら、クロ初号機ちゃんったら、カルシウム不足よ」

 だれか、この両親をどうにかしてくれないだろうか。

「……おばちゃん」

 突然ナスターシヤが母親(認めたくはないが)のスカートの裾を引っ張る。

「あら、ナスターシヤちゃん。無事にお兄ちゃんに拾われたのね。忘れちゃってごめんなさいね」

 ナスターシヤの頭をナデナデしながら、とんでもないことを暴露しやがった。

「おい、ナスターシヤがあんな場所に居たのって」

「久しぶりに帰郷すれば、迷宮があるじゃない。父さんとはしゃいだだけよ?」

「そうそう、アレはテンションが上がってな。ぶっちゃけ、今、ナスターシヤちゃんのことを思い出したくらいだ」

「本当にね。それから、クロ初号機ちゃんのことは、ファノンさんに言われて思い出したのよ」

 本当に、こいつらどうしてくれようと、俺が思ってしまったのは、仕方が無いことだった。

 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ