27
俺を先頭に進んでいると、マルガレーテが静止を求めてくる。こと探索に関してだけは、信用できるので、立ち止まる。
「そっから、先はスキル無効みたいです!!」
「でかした」
俺が先頭な限り、大抵のことは大丈夫だが、対策できる限りは対策をしておきたい。
「こっから、二人ずつだ。先頭は俺とアリス。真ん中がシャルロッテとナスターシヤ。殿をマルガレーテとMで頼む」
「モンスター倒すのは、わたしに任せといてね」
「ナスターシヤちゃん、手をつなぎましょう」
「……うん」
「マルガレーテの王子様!!後ろを守るのは妻の務めですもんね!!愛妻として、全身全霊で守りますから、安心してください」
「なに?!ケロの字、そんな意図が?!」
「どんな意図だよ?!」
言っておいてナンだが、答えは聞きたくない。
げっそりしつつも、俺はスキル無効地帯へと入る。
二人で並ぶと言っても、俺はアリスよりも半歩前を歩く。
純闇の俺は、属性攻撃に対して<精神>が高く、物理攻撃に対しては<回避>が高いので、どんな攻撃がきてもダメージにつながることがないからだ。
警戒しつつ進むと、蝙蝠系のモンスターが現れた。水晶の洞窟に合わせてか、透明な皮だが、内臓は普通のモノなので、視覚の暴力だ。こんなときのファントム・ミストが使用不可なのが悔やまれる。
こいつ、視覚的に、物理で倒したくない。
うんざりとした気分で、蝙蝠系のモンスターを観察すると、スキルを使おうとして使えずに行動不能に
なっていた。
ちょっとまて。
「ナスターシヤ、こっちに来てくれるか?」
「……行く」
嫌な予感を確かめるためにナスターシヤを呼ぶ。
「あいつを殴れるか?俺はすぐ側にいて、もし、あいつが反撃してきても守る」
「……やれる」
本当は俺が殴りたいのだが、闇属性持ちに当てるには<器用>が足りない。武器補正があれば別だが、俺は武器を持っていないのだ。
「ん」
ぽかっと、ナスターシヤが殴ると、一撃で倒れた。
火属性でもない子供の一撃で沈むのは予想外すぎて、思わず絶句してしまう。
「おにいちゃん?」
反応のない俺に、ナスターシヤはローブの裾を掴んでアピールする。
「あ、ああ。よくやった」
「うん」
こくんとナスターシヤが頷く。こんな状況じゃなければ、思わず頭を撫でてやりたくなる可愛さだ。無表情だけれども。
「クロ助、この蝙蝠、モノ凄く弱いね」
「多分、スキル攻撃メインなんだと思うが」
こいつら、なんでスキル無効地帯に住んでいるんだ。しかも、紙防御でHPも低い。初期値の攻撃力の一撃で死ねるとか、ある意味凄い。
「とりあえず、進むぞ」
とりあえず、スキル無効地帯を抜けると、広間に着いた。どうやら、あの蝙蝠系の住処らしい。
「あ、スキルが有効です」
マルガレーテが呟いた。
「お前ら、スキル無効まで戻れ!!」
すかさず言えば、悟ったアリスがみんなを引き連れて戻る。
とたんに蝙蝠系のモンスターの群れが襲いかかってきた。
蝙蝠系のモンスターは、初っ端にアイス・ブレスをかます。俺の<精神>でも無効にできないくらいにスキルの威力が高い。これ、純闇以外は普通に死ねるレベルだ。
「マルガレーテ、ナスターシヤ。そっから、投擲で倒していってくれ!Mも可能なら、マリアさん製品以外を投擲してくれ」
「あ、Mさん、クナイいっぱいあるんで、どうぞ」
倒すのは土属性組にまかせるとして、俺は状態異常を片っ端から試していく。
広間の半数を殲滅して判明したのは、さっきのスカルっぽいの並みに状態異常耐性を持っていることだった。きっと、あのスカルは中ボスじゃなかったんだ。そうに違いない。
そして、この蝙蝠どもは弱いどころか、普通にボス並みの攻撃力を有している。出現場所がその攻撃力を全力で封じにかかっていたけれども。
一通り倒すと、俺が広間をマッピングして、入って来た側とは反対側の通路へ入る。俺以外は、攻撃を喰らうと危ないので、俺を囮に全力疾走してもらった。
シャルロッテとナスターシヤを担いで走ったMの勇士については触れてやらないのが、情けだろう。




