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先制でシャドウ・バインドをかける。だが、かなり縛耐性が高いのか、すぐに解けてしまう。
すぐに闇属性スキルのフィアーをかける。こちらは耐性がないのか、スカルのようなモンスターは立ち尽くしたまま動けなくなった。
このチャンスに、ひたすら状態異常をかけまくる。うっかりヴェノムをかけそうになったりもしたが、ダメージを与えない状態異常は一通りかけた。
現段階で分かったのは、<恐怖>以外の耐性があるということだった。よりにもよって、その外見なのに、なんで恐怖耐性がないんだ。お前、スカルやめろと思った俺は正しい。
「っと、ヴェノムも耐性高いな」
ためしにとかけた、猛毒効果のある俺のヴェノムは、すぐに解ける。ダメージも瀕死になったとはいえ、当社比としてはイマイチな効きだ。
「マルガレーテ、こいつに投擲してみてくれ」
「はいはいはい!!」
応えと同時に、バシュっと猛スピードでクナイが飛んできた。そこは土属性の正確さで、スカルっぽいモンスターに直撃する。
「物理無効か」
物理ダメージが全く入っていなかった。あれだ、攻撃を受ける肉体がないからだろう。
「刻む場所がないもんね。骨が動かせるって何属性かな?」
「属性関係あんのか、ソレ?!」
俺と同じ結論のアリスが背後でのんびりのたまうが、論点がおかしい。最大の問題はアリス自体は通常運転だということだろう。むしろ、問題しかなかった。
「あ、マルガレーテの王子様、スカル系統は大抵土属性ですよー」
ヒュンとマルガレーテは風属性スキルのウィンド・カッターを使い、続けて土属性スキルのロック・ショットを使った。どちらも初期レベルの熟練度のため、ほとんどダメージが入らないが、ウィンド・カッターの方が効いている。
「闇と土だな」
ある程度情報が揃ったところで、ドレインを使わせてもらう。吸収具合からして、HPも高くないようだ。これで、俺のヴェノムを耐えたのだから、状態異常特化と言っても良いだろう。
仕留めたので、三叉路に残して来たシャルロッテたちを呼ぶ。
「スカル系の屍ってシュールですよね」
シャルロッテは開口一番そう言うと、メキメキと素材になると思われそうな部位を剥ぐ。とは言え、そこはスカルなので、骨しかない。
「……投擲」
ふと、ナスターシヤが頭部を拾うと、豪速球を投げた。
ガゴォ、バキャなどと不吉な音を立てながら、水晶の壁に穴があいた。だれだ、この子にこんな技を教えたのは。考えるまでもなくマルガレーテだろうけど。
「ナスターシヤ、破壊は“まだ”やめてくれ」
「……目印、消えたら意味ない。これなら、消えない」
「クラウディオさん、マッピングするのに目印欲しいですし、行動としては間違ってないと思いますよ」
「行動は正しいけど、手段が大問題だろうが」
「それはそうですね」
天然怖い。
どうしたものかと考えていると、Mが深呼吸している。嫌な予感しかしない。それも悪寒がともなう。
「はぁあああああああっ!!」
ドガァっと、ナスターシヤが空けた穴の側に殴りかかってくれた。
ボロボロと壁が崩れる。
「新しい道を見つけたよ!!」
「見つけたんじゃんじゃなくて、今そこで作っただろう!!」
Mのドヤ顔がイラっとくる。
「耐久は大丈夫そうですよー!!」
さらっと壁を調べていたマルガレーテが言う。結構、朗報だ。
「あまり、間隔をつめなければ、大丈夫そうですね。目印」
「……頑張る」
「もう、任せる」
崩れなければ、穴くらいは良い。
「Mとマルガレーテ、近道は最終手段だからな。あと、アリスにも言っとく」
「「「はーい」」」
返事だけは良い。ほんとに返事だけは。
更に調べるべく、奥に向かう。当然、Mのあけた近道は無視をした。




