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ここのボスは大蟷螂系のスリト・マンティスだ。カマキリのクセに、デス・スコーピオンよりもでかい。ただし、所詮は蟷螂なので、耐久はダーク・ドラゴンほどには高くはない。とは言え、比較対象の耐久が、迷宮内のボス配置のバランス崩壊レベルなので、別に紙耐久でもなかったりする。
俺もアリスも何度か撃破済みなので、二人でボコりに行く。
ボス部屋に入るや俺がシャドウ・バインドで動けなくした後、アリスは連続切りで蟷螂の微塵切りを製作していく。せめて、乱切りくらいにして欲しいものである。
「この何考えてるか分からない目が、なんか嫌なんだよね!!」
「だから、刻むな!!」
スリト・マンティスの円らな瞳(無機質)を容赦なく狙いまくりながらアリスが愚痴る。もっと酷い惨状は気にならないんだろうか。
地味に縛耐性があるため、俺はひたすらシャドウ・バインドをかけつづける。
ほぼ動かない俺と、動けないスリト・マンティスを他所に、ひたすら滅多切りするアリスは結構シュールだったりするが、見物人なんぞいないので気にしない。
暫く、一方的にアリスがきり続けていると、とうとうスリト・マンティスが斃れる。
当然ながら、拾える素材なんぞない。それだけではなく、ナスターシヤの情操教育に果てしなく害悪なグロイ物体と化している。
さすがにやばいので、シャルロッテにファントム・ミストをかけてもらって、ボス部屋を突っ切る。
樹海を抜けると、水晶の洞窟になる。透明度が高いのか、スケルトンのトンネルのようだ。ぶっちゃけ、日光が入るので、樹海よりも明るい。
「こっからは、俺が先頭を歩く。絶対に、同じ場所を歩け」
この辺りから未踏破部分がグンと増えるのは、この洞窟の床が滑るからだ。下手に動くと帰ってこれなくなる。
判明している場所を辿って、不明箇所に続く三叉路へ向かう。
「マルガレーテ、アース・プローブを頼む」
「おやすい御用です!!右側に、おそらく中ボスクラスの何かが潜んでいます!!」
「分かった。シャルロッテ、マッピングを頼む!Mはナスターシヤを気にかけてくれ!アリスとマルガレーテは、俺と一緒に右側に行くぞ!!」
「マッピングですね。分かりました」
「ああ、こっちはまかせな!」
「どんなモンスターかな?」
「マルガレーテの王子様とあたしは一蓮托生じゃないですか。今更、一緒にだなんて、再確認しなくったて、もうずぅううっと、ついていきます!!」
最後の一名の発言が、突っ込みどころしかないが、慣れは恐ろしいもので、スルーすることができた。
右側を三人で滑り進むと、足場があったので、一度止まる。
奥を見れば、スカルの一種と思われるモンスターが昼寝をしていた。
ぐでーと寝そべる姿はまるで、ただの屍のようだ。つか、こんなくつろいでダラダラした奴が中ボスは嫌だ。
「あれです」
小声で、マルガレーテが言う。大丈夫だ、まだ中ボスと決まった訳じゃない。
「イビキかいてるケドさ、骸骨がどうやってイビキかくんだろう?」
「それを考えるなら、呼吸しているところから、突っ込んで考えるべきだろうな」
ひそひそと話し合う。
ただ、情報がないので、どんな耐性を持って、どんな攻撃をしてくるのか未知数すぎて、下手に手を出せない。
「俺が、行くから、お前らはここで様子見をしろ。特にマルガレーテは、あいつの攻撃パターンを観察してくれ」
「クロ助、がんばれ」
「はいはいはい!!マルガレーテの王子様の活躍をもらさず記録します!!」
とりあえず、いかなければ何も始まらないので、俺は単独、スカルのモンスターに襲い掛かった。




