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数度、グリード・マンイーターを倒したところで、キャンプ地の確保を始める。
今までの場所と違って、モンスターが湧かない広間がないのだ。
そもそも、樹海の中なので、ボス前のこの広場以外に開けた場所もない。更に、ここはグリード・マンイーターがうようよいて、安らげる場所でもない。
フォレボワの迷宮はダーク・ドラゴンの洞穴を境に、迷宮そのものが殺しにかかってくる。ただし、マリアさんのトラップに比べれば、児戯に等しいレベルなのが、色々問題だ。
「コレ、使えないかい?」
Mはがさごそと、道具袋をあさって、トラップを取り出した。お前はマリアさんからトラップを買うのをやめろ。
「良いかも!!このあたりは、壊して困るもんないもん。でしょ?マル美!!」
「そうなんだけど、その代わり、遮蔽物もないんで、威力によっては自爆になるかも」
「……塹壕」
「塹壕作ったうえで、私がシールドを張れば、大丈夫かと。迷宮が消滅する威力でなければ」
相談しているが、マリアさんの前科が酷すぎて、踏み切れない。
そもそも、迷宮消失レベルの威力を否定できないって大問題だろう。あの人、いつかギルドに拘束されそうだ。
「よし、俺も全力で補助するから、やれ」
俺が言えば、Mはトラップを遠くへ放る。
衝撃にそなえて、俺たちは即興の塹壕に身を潜めた。
衝撃波に耐えて、顔をあげれば、えげつないクレーターが完成していた。
今回は良いが、このトラップは規制対象品に指定すべきだろう。
「あいっかわらず、マリアさんのトラップ凄いね」
のほほんとアリスが言う合間に、俺たちはクレータの中心部へと歩いて行く。
「一時間交代で見張りを立てるが、グリード・マンイーター対策として俺はこのまま起きている」
「はいはいはい!!マルガレーテの王子様!!あたしがお付き合いするので、交代は不要ですよー!!探索スキル的な意味で」
俺が順次休憩を取るように指示を出せば、マルガレーテがそう言って来た。不安しか抱かせない言い方だが、内容的には結構正しい。
「休まなくて大丈夫なのか?」
「もう、マルガレーテの王子様がソレを言っちゃいます?あたしなら、スキルを使う分、気を張らなくて良いんで、平気なんですよ!!」
ランランと血走る目には触れないようにしよう。
「あっ、みんな、クロ助は三日くらい徹夜でも平気だから、安心して!!」
「おい!!なんで、お前が言うんだ!!」
「えー、シャル子たちが心配そうだから?」
「あとな、俺が徹夜慣れしたのは、お前のせいだからな?!」
それもトラウマ付きで。
あれ、俺、トラウマの原因の殆どが「もしかしてアリス?」だ。マリアさんと並ぶ俺のトラウマ製造機だったんだな。
「まあ、それは良いとして、俺とマルガレーテで見張るから、お前らは休憩な。休息が終わり次第、ボスを突破。未踏破区画に入って行くから、休めるだけ休め」
「「「「「はーい」」」」」
返事をすると、それぞれ思い思いに寛いで行く。
俺がグリード・マンイーターの相手をしている間に、仲良くなったナスターシヤとMがアリスと一緒になにかしているが、心の平穏のために見なかったことにする。なにかあれば、シャルロッテが止めてくれるだろう。多分。
クレーターの中心でナスターシヤの教育に不安を抱きながら、見張りを続けた。




