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フォレボワの町に着いたのは、すっかり暗くなる頃だった。
市場が閉まる前に、素材を換金すると、そのままギルドへ向かう。
本来は武具屋に乗り込んで、苦情を出したいところなのだが、PT登録をさっさと済ませたい。
「そういえば、Mはどうするんだ?」
「ああ、あたいも、一緒に探索すろよ!」
大丈夫だ。変な道具さえなければ、Mも多分、マシな部類のハズだ。
ギルドに入り、PT申請書をもらった。
改めて、受付嬢とMの筋肉を見比べると、Mは女冒険者の範囲だと錯覚できるくらいには厚みが違っていた。
「ええっと、リーダーはどうするんだ?」
「はいはいはい!!わたしがやる!!」
「あたいに任せな!!」
「あたしはマルガレーテの王子様と同じですよー」
「私は誰も構いません」
「……おにいちゃん」
このPTのリーダーは罰ゲームに近いものがある気がした。せっかく、立候補者がいるので、じゃんけんで決めた結果、アリスがリーダーになった。不安しかない。
「っと、ナスターシヤはどうするか……」
市場でナスターシヤの兄貴について聞いてみたが、情報を得ることができなかった。ギルドでも迷子探索の依頼を探したが、一切なかった。
フォレボワには子供を預かる類の施設がないので、連れて行った上で、兄貴の痕跡を探すしかない。
「……ナスターシヤ、狩れる」
ナスターシヤは俺のローブをくいっとつかんだ後、弓を射る動作をする。思いついた動作ではなく、使ってきたのが分かる、慣れた動作だった。属性的にも、まさかの戦力になるかもしれない。
「じゃあ、ナスターシヤもPT登録……の前に、ギルド登録だな」
「私が記入しちゃいますね」
俺とシャルロッテの言葉に、ナスターシヤがこくんと頷く。無表情ながら、どこか嬉しそうだ。
必要事項を記入して、受付嬢に申請書を提出する。
内容の確認をしていた受付嬢ははたっと、視線をあげて、俺たちを見る。
「おイ、クロ坊、リーダーはお前ガやレ」
まさかの指名が入った。
驚いて受付嬢を見れば、嘆息された。解せない。
「あのナ、この中デ、熟練者の認定ガされているのハ、お前だけダ。お前を差し置いテ、他の奴ガ、リーダーにするのハ、理由が必要になル」
いやいやいや、ちょっと待て。
何かすごいことをさらっと言われた。
「は?え?熟練者?!」
「おおー、クロ助いつの間に?!」
「あれだけ、全滅の防止ニ成功すれバ、普通に認定されル。一年前くらいだナ」
衝撃すぎる。
そうか、普段、PT登録なんてしないから、気付かなかったのか。
シャルロッテもマルガレーテも驚いて、俺をガン見してくれている。いや、マルガレーテは通常運転な気もする。
「もう、リーダー、俺で良いです」
「そうカ」
そうして、数分の内に俺は念願のPTに所属することになった。罰ゲーム的みたいな面子のリーダーなどは考えないことにする。
その後は、迷宮探索に備えて、武具屋へと向かった。




