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ダズル・キャンサーは蟹系であるが故に、結構おいしい。
故に、火属性の二人がボロボロにする前に、ドレインで始末させてもらった。
「昼食は、コレで良いだろう」
「クロ助!!ナイス!!グッジョブ!!」
昨日から空腹気味のアリスが大喜びである。
無表情がデフォルトのナスターシヤは良いとして、フォレボワ出身ではない三人が引き気味である。鼠を食うやつに引かれたくはない。デス・スコーピオンとどっこいどっこいの外見だけれども。
「マルガレーテの王子様、それ、食べられるんですか?」
「普通に蟹の味がする」
「一人何尾か決めないといけないですねー」
マルガレーテの変わり身は早かった。
「沢を凍らせたら、もっと捕れそうですね」
そして、シャルロッテもひそかに寝返っていた。
「もう一回、泳いでこよう!!」
「良いね!!」
Mと便乗したアリスは準備体操をし始める始末だった。本当に順応早いな。
「これで我慢しとけ、焼き次第、奥に行くぞ」
ダズル・キャンサーの食べ放題に来た訳ではないので、その辺は全員割り切るのは早かった。
ダズル・キャンサーの身に火を通した後、更に奥の洞穴に移動することになった。
この近辺の洞穴は基本的にモンスターが出現しないので重宝するのだが、油断すると、中ボスの中熊系のイル・ベアーと「こんにちは」である。
体力的にキツイだろうと、ナスターシヤは俺が背負って歩いている。
焼けたダズル・キャンサーはアリスとMが抱えている。雑魚はシャルロッテとマルガレーテに任せる。
洞穴に入ると各々自由に座るのだが、やっぱり、マルガレーテがくっついて来た。そればかりか、ナスターシヤもしがみついたままだ。
「コレ、美味しいから、食ってみろ」
ぎゅうっと背中に張り付くナスターシヤにほぐした身を渡す。
「……ん」
手で受け取ると思いきや、直接口で食った。
「マルガレーテの王子様!!あたしにも、あーんってして下さい!!できれば、口移しが最高です!!」
「却下だ」
言うと、後は黙々と食べることに集中する。途中、ナスターシヤにわけるのも忘れない。
他の三人はと見れば、シャルロッテは上品且つ美味しそうに食べていた。だが、アリスとMは早食い大会を勝手に開催していた。
「そう言えば、シャルロッテ。ヴェントの迷宮には制限があるんだったよな」
「はい」
この際なので、先ほど中断した話しの続きをする。
「熟練者って、どうやって決めてるんだ?」
「そうですね。いくつかの迷宮で功績をのこした冒険者をギルドが認定するんです。功績と言うのは、未踏の場所での新種発見やボス撃破やマッピングなどが該当します。難易度が高い迷宮ならば、一箇所だけでも、新発見のボスを複数撃破などでしたら、認定されることもあるようです」
「ここは、ギルド的にも高難易度の迷宮なんだよな?」
「そうですね」
「未踏の場所まで行って、ボスを何体か撃破すれば良いんだよな?」
「はい」
シャルロッテだけではなく、マルガレーテも瞳を輝かせて、こっちを見てくる。何気に、ただの変人じゃなくて、普通に謎を探求する冒険者だったんだなと思う瞬間である。
「今日中に金を稼いで、装備を整えるか」
「「はい」」
研究タイプの冒険者二人の声がキレイにハモる。
少女たちの輝く笑顔に悪くないと思っていると、視界の端に大食い大会が入る。俺は、立ち上がると、アリスとMの所へ行き、残りのダズル・キャンサーを全て取り上げた。




