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大蜂系のコンフュージョン・ホーネットの蜂蜜は回復薬として重宝される。消耗品の材料のため、取引金額は結構高い。更に、ロイヤル・ゼリーはフォレボワの迷宮内でもトップ・クラスの高級素材である。
俺とアリスにとってはハイ・リターンな狩場だが、通常はリターン以上にハイ・リスクな狩場である。
風属性持ちのシャルロッテとマルガレーテはそのままでも善戦できるだろうが、残りの火属性組には、俺の補助が必須だ。
闇と風の混合属性のコンフュージョン・ホーネットは名前の通り、闇属性スキルのコンフュージョンを風属性の速さで仕掛けてくる。風属性持ち以外は先制で動きを止めるか、瞬殺するかしないと、ファースト・ターンの初っ端から混乱をかけられて全滅するのがオチである。
「はっちみつぅ!はっちみつぅ!」
取らぬタヌキの皮算用でウキウキとハイテンションになったアリスが、狩場に先陣きって突入していく。
「だから、待てよ!!」
「あたいに、まかせなぁあああ!!」
「……おい!!」
馬鹿力のクセに、混乱耐性がない火属性どもが静止も聞かずに、走って行く。アリスは、まあ、慣れているので、ある程度は大丈夫だろうが、Mは死亡フラグ乱立状態だ。
「元気ですね」
「マルガレーテの王子様!蜂蜜って、美容に良いんですよね?!もう、こんな回りくどいコトしなくっても、あたしは、生涯、キレイでいますよ!!」
風属性持ちが遠距離から容赦なく、先制攻撃を喰らわせた。
水属性スキルのフリーズ・バブルによって凍結したコンフュージョン・ホーネットがぼとぼと地面に落ちた。更に、投擲によって投げられたクナイで凍ったままバラバラになる。同じバラバラでも、凍結しているため、トラウマ要素は皆無である。どこぞの火属性どもはマジで見習うべきだ。
「……っと、危ないな」
シャルロッテとマルガレーテに関心していると、新手がアリスとMの近くまで迫っていたので、シャドウ・バインドでおとなしくしてもらう。
「クロ助!ありがとー!!ストレス発散するよー!!」
「助かるよ、ケロの字!!」
うおおおおおと、こっちは視覚にやさしくないバラバラを実行し出す。
つか、アリス。ストレスが溜まっているのは、どう考えても俺の方だ。
「そう言えば、コレがあったな」
前座が終わり、さて、本気で殲滅しようかというときに、Mが道具袋から、怪しい道具を取り出す。嫌な予感しかしない。
「とう!!」
土属性持ちなので、危なげなくMはその物体をコンフュージョン・ホーネットの集団の中心に投げ込んだ。
「お前ら、引け!!」
「クロ助?」
悪寒の酷さに、そう声をかけて、通路へ全力疾走する。その様子に残りの四人もあわててついてくる。
一番後ろのMが通路まで戻ってきたとき、背後で轟音がした。振り返るとコンフュージョン・ホーネットの住処が一本の火柱によって完全に覆われていた。なんつー規模のアイテムだ。最早、兵器かナニかだろう。
「おおー!!マリアさんのトラップかな?」
「ああ、武具屋でススメられたトラップだ。こっちは、威力が強いので目印には向かないが、攻撃アイテムに使えると言われたんだ!!」
普通に会話できるとか、お前らのメンタルはチタンか何かかよ。
「つか、コレ、威力が強いで済むレベルかよ?!」
「凄いですね。クレーターできてますよ?回復系のスキルでも再生には時間がかかりそうです」
上がった土煙の合間からちらちら見えるクレーターの端を観察しながら、シャルロッテが冷静に言う。
「うわあ。マルガレーテの王子様!全部吹き飛んじゃってます」
偵察系のスキルで調べていたのだろう、マルガレーテが報告してくる。
この惨状を引き起こしたMであるが、本人は武具屋でススメられた攻撃アイテムを使っただけなので無罪である。普通、攻撃アイテムでここまでの威力は想像しようがないだろう。
と、なると、目印のトラップ同様、コレもマリアさんが前面的に悪い。あの人、本当にマトモな物を作ってくれない。
「……これ、煙が退いたら、回復させるべきだよな」
せっかくの狩場を失いたくはない。いくら、モンスターが無限にわくといっても、ここまで環境が変わってしまっては、巣を他の場所で作るようになりかねない。
「力仕事ならまかせな!!」
「わたしも、力仕事できるよ!!」
一番任せたくない二名が一番ノリノリだ。
「私がモンスターを生け捕りにして、クラウディオさんがドレインで回復させるのが手っ取り早いと思います」
「だな」
「マルガレーテの王子様、あたしが運搬するんで、流れ作業できますよ!」
「じゃあ、それでいくか」
とりあえず、アリスとMには見物をしてもらうことにして、復旧作戦を開始した。
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